読者の皆さんは不思議だと思ったことはないだろうか。何の話かというと、ユーザー企業のIT部門がシステム開発を丸投げし、ご用聞きのSIerがそれを請け負うという、客とベンダーの関係性のことだ。「何を今さら」と失笑するかもしれないが、よく考えてみてほしい。客の「丸投げ」とベンダーの「ご用聞き」は本来なら相いれない。だってそうだろう。両者とも「システムをどう作るかはあなた任せ」と言っているわけだから。

 これだけではまだピンと来ていない人も多いだろうから、本題に入る前にもう少し説明しておく。客のIT部門が丸投げをしないのなら、SIerのご用聞き商売は当然成り立つ。客側が要件をしっかりと定義して、基本設計あたりまでを自力で進めてくれるならば、SIerは客の「ご用」をよく聞いて、詳細設計以降のソフトウエア製造作業にいそしめばよい。シニアの技術者なら思い出すはずだ。そう、昔はこうだったのである。

 一方、客のIT部門が要件定義なども含めて何でもSIer任せ、つまり丸投げするのなら、SIerがご用聞きであることは本来無理だ。なんせ客にご用を聞いても、客はどんなご用をお願いしてよいか分からないのだから。この場合、SIerはご用聞きではなく「先生」の立場で臨まなければならない。本物の先生、例えば医師ならば治療の方針を自分で決め、患者には「この薬を飲め」「運動して体重を減らせ」などと指導する。SIerも同じである。

 つまり、丸投げ客に対しては、コンサルティング能力あるいはソリューション提案能力が必要になる。実は客のIT部門が丸投げを多用し始めた2000年代前半、SIerはその事実に気付いた。そこで、コンサルティングはさすがに無理だったが、ソリューション提案が当時のSIerの間で一大ブームとなった。だが、まだまだ身の程知らずだったIT部門は、SIerのソリューション提案に対して「何様のつもりだ」「そんなの無理」と聞く耳を持たなかった。

 結局、SIerは「この薬を飲め(このパッケージソフトウエアを使いましょう)」「運動して体重を減らせ(業務改革しましょう)」といった提案をできなかった。そんな訳で「ソリューション提案」の内実は、「おっしゃっていただければ何でも作ります」というご用聞きそのものと何ら変わらない結果となった。だが、冒頭で書いた通り、丸投げとご用聞きは本来相いれない。何ゆえそんな最低最悪の組み合わせが可能になったのか。それは「自前主義の残りかす」のせいである。

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