日本のIT業界について、私がこの「極言暴論」でいつも問題にしているのは、ご用聞き商売であること、人月商売であること、世界に類を見ない多重下請け構造であることの3つだ。ユーザー企業のご用ばかりを聞いているようでは、変革の武器であるITで勝負する企業としては話にならないし、ピンハネが横行してブラック企業でも生息できる多重下請け構造を発達させているようでは、先端産業・ハイテク産業であるはずのITの名が泣く。

 だが人月商売については、それ自体が問題であるとは思っていない。こう書くと「えっ! 木村は今まで散々、人月商売は駄目だと書いてきたじゃないか。あれは嘘だったのか。それとも変節したのか」と非難の声がごうごうと巻き起こるかもしれない。だが、私は嘘を書いていないし、変節したわけでもない。これからきちんと説明するが、ご用聞きをベースにIT業界の多重下請け構造を使って行う人月商売が「悪」だと言っているだけだ。

 ご用聞き&多重下請け構造を前提とした人月商売がけしからん訳は、これまで何度も極言暴論で書いてきている。かいつまんで言えば、技術者の知的労働という付加価値をないがしろにしており、どう言い訳しても「ピンハネビジネス」というそしりを免れないからだ。客の要望通りのシステムを作るために、「手配師」や「人売り」と皮肉られる下請けITベンダーを使って、必要な頭数の技術者を動員する人月商売が駄目なのだ。

 実はうかつなことに、IT業界の人月商売のありようについて、もっとはっきり言えば料金の取り方について長い間2つ誤解していた。一つは建設業界などと同様に、IT業界でも提案料を請求して受け取っていると思っていたことだ。この件は極言暴論で何度か問題にしているが、SIerは請求しないどころか、提案を客にタダでくれてやって当然と思っている。自分たちの知的労働を自らここまでないがしろにしているとは!これには本当に驚いた。

 もう一つは、SIerがシステム開発を請け負って以降に関する誤解だ。フェーズによって人月単価は違う、設計工程は開発(ソフトウエア製造)工程に比べて単価が高いと思い込んでいたのだ。だって、そうだろう。IT業界に限らずどんな業界でも設計の付加価値は高いし、SIerも「下請けITベンダーとの差は設計力」などと言っているわけだから、そう思って当然だ。だが最近、大手SIerの人から「単価に差をつけていない」と言われて仰天した。

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