少し前に、経済産業省の「有識者検討会」なるものに参加した。正確に言うと、2019年6月から8月にかけて5回開かれた「デジタルガバナンスに関する有識者検討会」に委員として参加したのだ。日ごろ、この「極言暴論」をはじめ行儀の悪い記事ばかり書き、とても有識者と言えないような私がなぜ、そんな会議に参加したのか。今回はそこから少し真面目に話を説き起こす。

 そもそも「デジタルガバナンス」とは何ぞ。厳密に説明しようとすると即座に眠くなるだけなので、極めて大ざっぱに語ってしまおう。要は、「俺はITがよう分からん」というITオンチの経営者や、デジタル戦略というか夢物語ばかりを語る経営者に、自社のIT(=デジタル)利活用に対してきちんと関与させようという取り組みだ。で、そのための策を検討するのが検討会の目的だ。

 なぜ私が参加したのか。今IT業界でちょっとしたバズワードになっている「2025年の崖」に関して経産省から意見を求められたのがきっかけだ。以前記事に書いた通り、経産省が2018年9月に公表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」は、役所の報告書とは思えないほど面白すぎる内容だった。

 まず「2025年の崖」という、いかにも独り歩きしそうなキャッチーな言葉が良い。独り歩きするぐらい(実際にそうなった)強い言葉でアピールしてこそ、多くの人に関心を持ってもらえるからだ。そして内容面でも、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)には老朽化した基幹系システムの刷新が不可欠と結論付けた点が、私の日ごろの問題意識とピタリと一致していた。

 経産省から意見を求められた時、私はそんな話をした。そのときのやりとりが縁となり、「検討会の委員になってくれ」と経産省から声がかかったのだ。話を聞くと、デジタルガバナンスに関する有識者検討会は2025年の崖の克服、つまり企業の経営者に老朽化した基幹系システムの刷新も含め、DXを推進させるための策を検討するのだという。

 そう言われて検討会に参加する気になった。と言うのも、日本企業のIT利活用の駄目っぷりだけでなく、人月商売にまみれた日本のIT業界の大問題も、その根っこには経営者のIT対する無理解・無関心があるからだ。少しおおげさだが、ITオンチの経営者が多数存在する事実はデジタル時代の「国難」と言ってよい。

 老朽化してやばい状態の基幹系システムを放置したまま、「DXに取り組む」と称してデジタル推進組織に全て丸投げし、しょぼいPoC(概念実証)に明け暮れる。たとえ基幹系システムの刷新に乗り出しても、やはりIT部門に丸投げ。利用部門の要求がこれでもかと詰まった非効率な独自システムを高い金でつくってしまう。その結果、IT業界では世界に類を見ない人月商売と多重下請け構造が繁栄を続ける――。極言暴論で何度も指摘してきた諸問題を抜本的に解決するには、ITオンチの経営者を何とかするしかない。

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