人月商売のITベンダーの営業担当者はとんでもなく技術者に嫌われているなとつくづく思う。何せ聞こえてくる罵詈(ばり)雑言がものすごい。「人売り屋の連中め」などはまだまともなほうで、お行儀の悪い「極言暴論」でも紹介できないようなひどい言葉を何度も聞いたことがある。

 私は取材の関係で、人格も成績も優れた営業担当者を何人も知っているので、そこまで言われるとさすがに気の毒になる。ただ、実際に「君ら、(人月単価)70万円で売れたからな」などと不適切な表現を平気で使う営業担当者もいる。おそらく下請けITベンダーの営業担当者だけだと思うが、こんな言葉を投げつけられたら技術者は気分が良いはずがない。

 営業担当者が評判を落とす理由はもちろん言葉遣いだけではない。例えば技術者が精緻に見積もったにもかかわらず、客に「この金額じゃ、おたくに任せられないよ」と脅され、あっさり値引きしてしまうアホ営業の話は数知れない。おかげで開発プロジェクトは大炎上。当の営業担当者は「俺はこれくらいしかできないけど」と栄養ドリンクを置いていく。技術者からすると「首絞めたろか、こいつ」である。

 プロジェクトの最中にモンスターな客が無理難題を押し付けてきた際の営業担当者の振る舞いにも、技術者の怒りの矛先が向く。当初の契約や約束にない要求の場合、営業担当者が間に入って客に翻意をお願いするか、契約条件の変更を交渉すべきだが、それをやらずにプロジェクトマネジャーに「そんな要求は現場でうまくさばいてよ」などと言う。中には客側に立って「それぐらい何とかしろよ」と言い出す営業担当者もいる始末だ。

 この手の話は他にもいろいろある。これ以上挙げても生産的ではないので、この辺りでやめておくが、いま例示したエピソードからだけでも営業担当者が技術者に嫌われるのはもっともだという感がある。では、こうした営業担当者が無能なのかというと、必ずしもそうではない。実は、人月商売の営業は本来、「並」の営業担当者には務まらないのだ。

 「まとも」な人月商売のためには超優秀な営業担当者が要る。その話はおいおい書くとして、ここでは1つだけ指摘しておく。人月商売は他の業種と異なり、営業担当者だけでは営業活動を完結できないのだ。

 自動車や家電製品などの営業・販売を思い浮かべてもらえば理解できると思うが、こうしたモノ売りでは原則として営業担当者だけで営業活動を完結できる。それに対してシステム開発などの人月商売の場合、営業担当者が1人で扱える自動車や家電製品のような商品がない。そのため技術者を巻き込んで営業活動する必要がある。その難しさゆえに、とんでもない営業担当者が出現し、結果として技術者が地獄を見るのだ。

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