不思議だ。実に不思議だ。最近、どのSIerの経営者も「DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む顧客のパートナーになる」とか「顧客のDXを支援するパートナー企業を目指す」などと力説する。だけどDXのパートナーになるために必要な施策には全く取り組もうしない。「何でやらないの」と聞くと、「うちにはとてもとても……」と訳の分からない話をする。

 「パートナー」とはSIerの経営者が大好きな言葉の1つだ。パートナーという言葉は本来、「事業パートナー」といった具合に、新市場の開拓などに向かって対等の立場で協力し合う関係を指すはずだが、SIerの場合はどうもそうではない。例の「お客さまに寄り添う」という気色悪い言葉を、少しはましな言葉に置き換えただけのようだ。

 だが、たとえ「DXに取り組むお客さまに寄り添う」ぐらいの意味であったとしても、従来の人月商売の延長線上では不可能だ。少なくとも会社として次の3つの能力・機能が必要になる。DXを巡って経営者や事業部門の相談相手となり得るコンサルティング能力、デジタルサービスの開発を支援できるアーキテクトやプログラマーの存在、そしてサービスを実装するインフラやプラットフォームの提供である。

 これら3つの能力・機能は、DXの時代、デジタル変革の時代にITベンダーが身に付けていなければならない、いわば「三種の神器」だ。だから私はこの「極言暴論」や、それと対をなす正統派コラム「極言正論」でくどいほど、その必要性を説いている。さらにSIerの経営者に会うたびにその話をする。おそらく内心では「またその話か」と苦笑いしているだろうけど、誰からも「言っていることは全くその通り」と同意する言葉が返ってくる。

 では、3つの能力・機能の中で何が最も重要なのかと言うと、「DXに取り組む顧客のパートナー」を目指すSIerとしては、コンサルティング能力に決まっている。なぜならDXはデジタル技術を使った事業構造の変革である。顧客企業にとって全社的な変革なのだから、客は経営者をはじめとする経営層でしかない。

 だからコンサルティング能力が無かったら話にならない。何せSIerは「お客さま(つまり顧客企業の経営層)のパートナーになる」と宣言しているのである。客である経営層に会って、客のDX戦略の立案や実行を支援する。たとえ今はコンサルティング能力が無かったとしても、SIerの経営目標がDXのパートナーであるなら、それに向かって努力するのが当たり前である。

 ようやく富士通がそのあたりに気づいてDXコンサルティング会社を設立すると発表したし、野村総合研究所のように以前からコンサルタントを抱えるSIerもある。だが、他のSIerでは、経営者に「コンサルティング能力を何で持たないの」と聞いても「うちにはとても無理」といった反応しか返ってこない。だったら自動的に「DXに取り組む顧客のパートナーを目指す」との方針はうそということになるぞ。その矛盾に気付いていないのは、全くもって不思議である。

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