「お客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)、デジタル変革を支援する」――。最近、大手SIerの経営幹部がやたらとDXを連呼する。2年ほど前までDXを連呼するのは外資系ITベンダーの幹部やマーケターぐらいで、SIerの幹部は「DXなんて、いつものバズワードでしょ」と冷ややかに見ていた。変われば変わるものである。

 SIerの幹部が「DXだ。デジタル変革だ」と騒ぐようになったのは、もちろんDXに対する客の関心が高まっているからだ。ご用聞きで「お客様に寄り添う」ことをモットーにするSIerとすれば当然の反応。重要な客である大企業の経営者らが米国や中国などでデジタル化の動向を目の当たりにして危機感を持ち、IT部門などに「デジタルで何かやれ」と命じたりしているから、IT部門にへばり付いているSIerとしてもデジタルを語らざるを得ない。

 「DXで基幹系システムの刷新案件をゲットする」という思惑もある。DXはデジタルを活用したビジネス構造の変革だから、AI(人工知能)などを活用した新規事業の立ち上げを図るだけではダメで、全社的な変革のため基幹系システムも刷新すべし――。そのように説く、例の経済産業省の「DXレポート」がSIerの思惑をかき立てた。

 このDXレポート絡みの話は何度か書いているので、これ以上ダラダラとは述べないが、要はレポートのタイトルについた「2025年の崖」という言葉がキャッチーで素晴らしかった。根拠は薄弱とはいえ「2025年までに老朽化したシステムを刷新しないと大変な事態になり、DXも無理」とのメッセージが多くのユーザー企業に浸透した。

 これに飛び付いたのが、我らがSIerである。今は案件が山積みで人月商売に困らないが、東京オリンピック・パラリンピックのうたげが終わる2020年以降が心配だ。もし「2025年の崖」への問題意識から多くの客が基幹系システムの刷新を計画してくれるなら、SIerは当面食いっぱぐれる心配はない。そこでSIerの経営幹部たちは軒並みDXを語り始めたわけだ。

 だが、ご用聞きの人月商売の悲しさである。コンサルティング能力を全く持たないSIerは、客の経営者相手にまともな提案をできない。デジタルで何かやることがDXだと思っている経営者にはコンサルティングが必要だが、SIerにはそれができない。

 仕方がないので、AIやIoT(インターネット・オブ・シングズ)などをネタにしたしょぼいPoC(概念実証)を手伝うとともに、いつ意思決定されるか分からない基幹系システムの刷新を気長に待つ。それがSIerの経営幹部が言うところの「お客様のDXを支援する」の偽らざる中身なのだ。そんなSIerの“DX戦略”に腰を抜かした話を次に紹介しよう。

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