日本のIT業界の関係者は、自分たちの業界が建設業界によく似ていると思っている。さらに心ある人は「ITはハイテク産業のはずなのに労働集約型の建設と同じだから、日本のIT業界はダメなんだ」と嘆く。確かに多重下請け構造は建設業界にそっくり。米グーグル(Google)や米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)などの巨大プラットフォーマーが主導し、知識集約型あるいは資本集約型の産業として進化を続ける米国のIT業界と比べて、ため息をつくしかない。

 しかし、建設業界の人から言わせると「冗談じゃない!」ということらしい。以前、大手ゼネコンのCIO(最高情報責任者)から聞いた話だが、この人はIT業界の多重下請け構造のひどさを知ったとき、あきれ果てたという。IT業界で大手ゼネコンに相当する大手SIerが元請けとなったプロジェクトでも、設計やプロジェクトマネジメント(建設業では施行管理)がいい加減だし、長時間労働も常態化しているので、もうビックリだったそうだ。

 そんなIT業界の連中が「IT業界は建設業界に似ている」などと言うから、「冗談じゃない!」となる。建設業界は建設業法の縛りもあり、それなりに近代化されている。そのCIOは「IT業界が建設業界に似ているとされるのは迷惑千万」と憤慨していた。実はこのCIOの話をTwitterでツイートしたところ、建設業界の関係者、そして建設とITの両業界をよく知る人から「その通り」というコメントが多数寄せられた。

 つまり日本のIT業界は、知識集約型産業のフリをした労働集約型産業だからダメなだけでなく、同じ労働集約型産業から見ても「下の下」だから、どうしようもない。IT業界の関係者には衝撃だろうが、「日本のIT業界は労働集約型の建設業界と同じだからダメだ」との嘆きですら、単なる思い上がりでしかない。多重下請け構造による人月商売を続けてきたわけだから、本来なら欺まん的に嘆いていないで、少しでもまともなビジネスにすべく建設業界に真摯に学ぶ必要がある。

 実は、こう書いている私も大手ゼネコンのCIOから話を聞くまでは「IT業界は建設業界と同じ」と漠然と思っていたから、あまり偉そうなことは言えない。かなり反省しつつ話を聞いていたが、その際に思い至ったことがある。「そう言えば建築デザインとかでは提案料を取るよね」。SIerは知的成果物の塊であるはずの提案を客にタダで提供してしまうから、その意味でもIT業界は建設業界の足元にも及ばないわけだ。

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