SIerの幹部に会うと、たまに悪い癖が出て「上から目線モード」になる。まあ、相手からすると嫌なやつだ。そんなとき私が口にするのは、この「極言暴論」で何度も書いているような話だ。例えば「客をしつけなさいよ」だとか「『お客さまに寄り添う』のような気色悪い言葉はNGワードにすべし」といった具合である。

 なぜこんな嫌なやつになるかと言うと、SIerの幹部からあまりにトホホな話を聞いてしまうからだ。「うちは絶対に逃げないことでお客さまの信頼を得ている」などといった話を聞くと、「何言ってんだ、あんたは奴隷か」などと思い、上から目線モードにスイッチが入ってしまう。

 ご用聞きの行き着く先というか、奴隷根性のなせる業というか、いくら大切な客だからといっても無理難題を含めて何でもかんでも聞き入れ、客のわがままが原因でプロジェクトが炎上しても、決して手を引かず頑張ってしまう。当然、現場の技術者は疲弊の極致になる。そんな「愚行」を誇る幹部ははっきり言ってアホである。

 第一、客の満足度は高まらない。絶対に逃げないからと宣言しても、無理難題を聞き入れても満足度は高まらないのだ。まさに労多くして功少なしである。そう言えば最近、そんな常識的な話をTwitterでツイートしたところ、結構な数のリツイートや「いいね」があり、いわゆる「バズった」状態になった。こんな話だ。

 「顧客満足度調査のパラドックスというのがあって、契約範囲の仕事しかしない外資系ITベンダーよりも、客の要望に何でも応えるご用聞きITベンダーのほうが顧客満足度は低くなる。『何でもやって当然』と客が思い、どんなに客に寄り添って一生懸命尽くしても、客はありがたく思わなくなるからだ」

 このパラドックスは、随分前から日本のITベンダーが身をもって経験してきた。昔、日本IBMがIT業界に君臨していたころ、日本のITベンダーはきめ細かなサービス、つまりご用聞きによって、“何もしない”IBMと差異化を図ろうとした。だが顧客満足度調査などで常に惨敗。幹部は「なぜだ!」と叫んでいたが、今思えば当たり前である。当時のIBMは、IBMがやる作業と客がやるべき作業を切り分け、客をしつけるのがうまかったのだ。

 ツイートがバズったので、IT業界でも常識と思っていたパラドックスが意外に知られていないと分かり、少し驚いた。でもまあSIerの幹部ですら、客に尽くしても報われないという常識を認識していない以上、多くの人が知らなくても仕方がないのかもしれない。ただ、この話は何度か極言暴論で取り上げている。極言暴論も思ったほど読まれていないわけで、それはそれで少々ショックを受けたりもしたのだが。

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