人月商売を営むIT業界は技術者に長時間労働を強いるブラック職場として世間に知られてきた。ところが、当のITベンダーの経営者のほとんどは自分たちの会社をブラック企業だと思っていない。下請けITベンダーの中には真性のブラック企業も数多く存在するとはいえ、特にSIerの経営者らは技術者の長時間労働問題にきちんと対処しているとする。だが、そんなホワイト企業のはずのITベンダーの中にブラック職場が厳然と存在する。

 それはなぜなのか。別にナゾでも何でもない。ITベンダーの経営者に長時間労働の職場が残っている言い訳を聞けば、すぐに分かることだ。その言い訳の代表例は「客先に常駐するから仕方がない」「お客様の納期の要求がきつくて」といったもの。自分たちは長時間労働の是正に努力しているが、客の理解が得られないなら仕方がないというわけだ。要は、悪いのは自分たちでなく客であると言い訳しているのだ。

 そうした言い訳は、「お客様に尽くす」ことをモットーにしている御用聞き商売のITベンダーにしては大胆な発言である。なんせ、その言い訳の論理的帰結は「客が極悪非道なブラック組織だから、自社の技術者が犠牲を強いられている」となるからだ。ということは、客先に常駐する技術者の残業時間がダントツのトップとなる金融機関や、システム開発でムチャクチャな納期を要求する官公庁が極悪非道なブラック組織の筆頭というわけだ。

 こう書くと「おいおい、それは言い過ぎではないか」と読者からたしなめられそうだ。確かに言い過ぎなのだが、あえて書くのには理由がある。特に金融機関や官公庁のシステムは「重要な社会インフラ」という大義があるからか、「納期厳守」「絶対止めるな」を達成するためなら技術者の長時間労働は当たり前という風潮があった。過労で倒れ、中には不幸にも亡くなる人がいたにもかかわらず、是正が進んで来なかった。だから「極悪非道なブラック組織」とレッテルを貼って反省を促したほうがよい。

 だが今は働き方改革の世である。自らも長時間労働が当たり前だった金融機関や官公も、働き方改革に勤しんでいると聞く。長時間労働をこれまで以上に厳しく制限する働き方改革関連法案も成立したから、これからは業務を依託するITベンダーの技術者に長時間労働を強いることもあるまい。だが、今でも「お客様の理解を得るのが難しい」などと言い訳するITベンダーの経営者に出会うから、いったいこれはどうしたことか。

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