最近、経済産業省の官僚の人たちと会う機会があり、IT人材の件でも議論したので、改めて世間で騒がれている「技術者不足」の実態を調べてみた。まず経産省が2016年6月に発表した調査結果では、2015年の段階でIT人材が17万人不足していたとする。さらに2020年には29万人、2025年には43万人と不足人数が拡大していく見立てだ。経産省は定期的にIT人材不足を騒ぎ立てるので、この数字は話半分でよい。

 むしろ問題は不足するIT人材の内訳だ。経産省は同じ発表で、人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)などの先端IT人材が2020年に4万8000人不足し、情報セキュリティ人材が19万3000人不足するとしている。足し合わせると24万人。この数字も「当たるも八卦、当たらぬも八卦」だが、2020年にIT人材が29万人不足すると言っても、その大半が先端IT分野やセキュリティ分野の技術者ということになる。

 ビジネスのデジタル化のトレンドと重ね合わせれば、これらの数字の確度はともかく、IT人材不足の「方向感」としてはおおむね正しい。一方で、そうした方向感とは無縁の世界で「人手が足りない」「技術者不足が深刻だ」と騒いでいるのが、我らが人月商売のITベンダーの面々である。もちろん人月商売も人海戦術ゆえに好況の今は、特にシステム開発の実働部隊をかき集める下請けITベンダーで技術者が足りていない。

 この「極言暴論」の読者には常識の話かと思うが、初めて記事を読む若者もいるかと思うので、あえて言っておく。IT人材不足が深刻化するという話を真に受けるのはよいが、だからと言って「ITベンダーに就職すれば将来は安泰だ」などと短絡的に考えてはならない。一口にITと言っても、就職先と仕事の内容を慎重に検討する必要があるぞ。ユーザー企業やITベンチャーで先端IT人材になるのと、人月商売の下請けITベンダーでコーダーになるとでは、同じ「IT人材」でも将来が天と地ほど違う。

 IT人材不足、技術者不足と言っても、今後どんどん不足が深刻化する職種と、今は人手が足りていなくても近い将来にその多くが用済みになる職種がある。用済みとなるのは、もちろんSIerや下請けITベンダーを問わず、大半の技術者に共通ワッペンのように貼り付けられる「SE」という職種。つまり人月商売における「何でも屋」だ。そうした用済みとなる職種と人材不足が深刻化する職種との間で、雇用の潜在的ミスマッチが実はすさまじいのだ。

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