就活生の中には「SIer大好きセグメント」に属する若者が大勢いると聞いて、腰を抜かしそうになったことがある。大手SIerに入社して技術者として働きたいというのだから、驚いて当然だろう。もし目の前にSIer大好きセグメントの就活生がいたら、「おいおい、業界研究や企業研究をしっかりやったか」などと要らぬ説教をしてしまうかもしれない。

 教えてくれたのは大手SIerの幹部だった。SIer大好きセグメントの就活生はいわゆる草食系の若者で、親の言うことをよく聞く優等生タイプが多いそうだ。表向きの志望理由は「客と対話しながら仕事したい」などだそうだが、本音は安定志向。NTTデータや野村総合研究所(NRI)などの業績を見てSIerを志望するらしい。

 大手SIerの多くはネームバリューの高い企業の子会社が多いから、就活生の親の受けも良い。例えばNTTデータなら、親から「NTTでしょ、そこにしなさい」と勧められる。コンサルタントを多数抱えるNRIの給与水準の高さも手伝って、SIer全体が就活生やその親から好印象を持たれているとのことだ。

 SIerの幹部からSIer大好きセグメントに対する分析を聞いているうちに、当初腰を抜かしそうになっていた私も「なるほど」と納得してしまった。本人だけでなくその親もSIerへの就職に満足しているなら、第三者がとやかく言っても仕方がない。それに同じ人月商売のIT業界であっても多重下請け構造の元締企業なら、モンスター客にでも遭遇しない限り悲惨な目に遭う心配も少ないからね。

 実は、この話を聞いたのは1年近く前だ。私の場合、腰を抜かしそうな話はこの「極言暴論」のネタになる。ということで当時も記事にしようと一瞬思ったが、本人たちが満足しているなら、まさに第三者がとやかく言う筋合いではない。書いたところで「就活生よ、SIerではなくITベンチャーを目指せ」などという、ありきたりな結論にしかなりそうもない。

 そんなわけで、このときは極言暴論の記事にするのを見送ったが、モヤモヤは残った。技術者になりたい若者にとって、SIerの主力業務であるプロジェクトマネジメントは憧れの仕事なのだろうか。今どき技術者を志すならば、自ら手を動かしシステムを作り上げるプログラマー、そしてアーキテクトが目指したい未来ではないのか。

 そう考えていたら最近、「案の定」という事態がSIer各社で進行している。優秀な若手技術者が片っ端から辞めていくのだ。SIerでのキャリアに見切りをつける技術者は昔からそれなりにいたが、ここに来てSIer各社で特に若手の退職が急増している。恐らく思い描いていた技術者像や仕事内容とのあまりの乖離(かいり)に失望して、新天地を目指すのだろう。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら