不思議に思っていたことがある。何かと言うと、システム開発プロジェクトが大炎上して、場合によっては訴訟沙汰になるトラブル事例に、1つの典型パターンがあることだ。SIerがパッケージソフトウエアの活用を提案し、客も同意して開発に着手するも、途中で客から「これじゃ使えない!」との火の手が上がり大炎上。結局はパッケージソフトの利用を断念し、後は悲惨なデスマーチに……。このパターンがやたら多いのだ。

 こう書くと、「フィット&ギャップ分析が足らないから失敗するんでしょ。昔からよくある話で、何を今さら不思議がっているの」と読者からいきなりツッコミを入れられてしまいそうだ。確かに、客の業務とパッケージソフトの機能とがどの程度適合してどの程度乖離(かいり)しているのかを調べる作業が甘いと、一発アウトで大トラブルに発展するのは間違いない。だが、私が不思議に思っていたのは、なぜそんなアホな展開が昔からよくあるのか、という点だ。

 しかも、どことは言わないが、お互いに罵り合う泥沼の訴訟沙汰になった案件では、SIerにとって相手はただの客ではなく最重要顧客だったケースもある。長期にわたって良好な関係を築き、客のシステム開発や運用保守を一手に引き受けてきたにもかかわらず、どうしたことか、突然、パッケージソフトを利用したシステム開発でつまずく。要件定義もフィット&ギャップ分析もまともにできない。もう驚きである。

 そもそも私はこの「極言暴論」などで、ERP(統合基幹業務システム)などパッケージソフトを導入する際には、客の業務にパッケージソフトを合わせる、つまりカスタマイズするのではなく、客の業務をパッケージソフトに合わせろと主張してきた。だから、業務をパッケージソフトの機能や標準業務プロセスに合わせる気が全く無い客に、パッケージソフトの適用を勧めるSIerのアホさ加減が全く理解できない。

 揚げ句の果てに大炎上である。パッケージソフトの利用を途中で断念すると、システムの完成は大幅に遅れるし開発コストの上乗せもハンパない。SIerはその全額を背負い込むわけにいかず、納期を含めて客と交渉するが、両者の関係はどんどん険悪になる。追加コストの負担割合で合意できても、信頼関係が崩壊しているため要件定義のやり直しも満足に進まず、プロジェクトは頓挫する。この業界にはそんな屍(しかばね)が累々なのに、自らも同じ道をたどって新たな屍と化すのはなぜなのか。

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