最近、金融機関の勘定系システムなどの保守運用業務が、技術者にとってどんどんやばくなっているそうだ。そもそも金融機関のシステムの現場といえば、従来は「超」が付くほどの長時間労働の温床。ITベンダーの技術者が常駐すると、プライベートは完全に犠牲になり、下手をすると体を壊すような職場だった。

 例えばかつて大手銀行に常駐していた技術者に「銀行の仕事は長時間労働がすさまじいと聞くけど、実際にはどうなの」と尋ねたら、「その通りですよ。私が常駐していた当時はいつも終電で帰っていました」と返ってきた。「何で」と重ねて聞くと、「だって客からの指示が来るのがいつも午後11時でしたから」と。

 まあ、銀行など金融機関はシステムトラブルやセキュリティーリスクをどんなことがあっても避けなければならないし、金融庁のお達しにも即座に対応しなければならない。だから金融機関のIT部門にも言い分はあるだろうが、ITベンダーの技術者にとっては夜遅くに「今日中に対応せよ」「明朝までに何とかして」と言われるのが当たり前のブラック職場だった。

 ところが、最近は状況が随分変わったらしい。その原因は例の働き方改革だ。長時間労働が当たり前だった金融機関でも、従業員の時短に乗り出している。IT部門もしかりだ。無用な部内会議などが減ったためか、以前に比べれば指示を出す時刻が早くなり、その分、ITベンダーの常駐技術者の長時間労働も緩和されつつあると聞く。

 「だったら、金融機関の保守運用業務がどんどんやばくなっているというのは、どういう意味だ」。読者はそう不審に思うかもしれない。だが、実はこれがやばいのだ。以前なら、常軌を逸した長時間労働からの脱出が技術者の転職の強い動機になっていたが、常軌を逸さない程度の長時間労働になると、その動機は薄らいでしまう。

 つまり金融機関に居付いてしまうのだ。金融機関が支払う人月単価は他の業種に比べてかなり高い。ITベンダーが技術者本人にどのくらい給与として還元しているかは定かではないが、給与水準は悪くないはずだ。だから、これまでより労働時間などの労働条件が少しマシになれば、「このまま働き続けるのも悪くない」と思ってしまう。

 だけど、そのまま居付いてしまったら、技術者としては終わり、アウトだぞ。若手技術者なら近くにいる先輩技術者を観察してみるとよい。保守運用業務ばかりを担って中年になったら、もはや他に行き場がなくなる。で、客の金融機関からお払い箱になったら、いったいどうするつもりか。

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