最近、SIerなど大手ITベンダーの経営幹部に会うと、決まって次のようなぼやきを聞かされる。「若手や中堅の優秀な技術者が相次いで辞めてしまってね。我が社の将来を背負って立つような人材ばかりだから極めて深刻なんだよ。懸命に引き留めるのだが、とても翻意してもらえなくてね」。

 「SIerに優秀な技術者っていたっけ? プログラムを書かず、手配師みたいな仕事しかやってないじゃん」とツッコミたくなる読者は多いと思うが、取りあえずこらえてほしい。SIerにも優秀な技術者は探せばいるのだ。

 システム開発の現場監督であるプロジェクトマネジャーとして優秀な人もいるし、システムを設計するSEとして優秀な人もいる。加えて最近のSIerはアジャイル開発要員などとしてプログラマーを育ててきているし、AI(人工知能)など先端分野の技術者の育成にも力を入れようとしている。

 ただし「SIerに優秀な技術者っていたっけ?」と不審がるのは当然だ。優秀な技術者はそうでない技術者に比べて圧倒的に少数派だから、ユーザー企業のIT部員や下請けITベンダーの技術者が彼らに遭遇する確率は低い。さらにシステム開発はチームプレーなので、優秀な技術者の優秀さが際立つ場面も少ない。

 そんな優秀な技術者が転職してしまう理由は後で分析するが、SIerなどITベンダーの経営幹部が頭を抱えるのは当たり前だ。せっかく育った、あるいは育ちつつある優秀な技術者は圧倒的少数派。その圧倒的少数派が相次いで転職してしまうのだから、そりゃたまらないだろう。

 では、最近どれくらい転職してしまう技術者が増えているのか。それはITベンダーによりケース・バイ・ケース。ただし最近では、これまでの離職率の高低にかかわらず、将来を嘱望されていた技術者が辞めてしまうケースが従来よりも増えている。ITベンダー各社の経営幹部のぼやきを総合すると、そんな結論になる。

 もちろん優秀な技術者が同業の人月商売に転職することは99パーセントあり得ない。転職先はユーザー企業やITベンチャー、いわゆるプラットフォーマー、コンサルティング会社といった異業種の企業だ。SIerでは「大切なお客さま」である大企業に大切な技術者を引き抜かれて、「いくらお客さまでも、あんまりだ」とほぞをかむケースが頻繁に起こっている。

 「シリコンバレーより、南武線エリアのエンジニアが欲しい」。2017年夏に、大手ITベンダーなどの事業所が集まるJR南武線の駅に掲示したトヨタ自動車の求人広告は、多くのITベンダーに衝撃を与えた。あれから2年近くたったが、もはや「仁義無き」技術者争奪戦は当たり前となり、SIerなど大手ITベンダーは技術者供給源として、日本経済に“貢献”するようになったのだ。

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