いやぁ、白旗を揚げたくなるような気分だ。この極言暴論などで問題点や将来のリスクを何度も指摘してきたが、もはや多勢に無勢。ITベンダーの人からは「木村さんが何と言おうと、大きな流れは止まりませんよ」と皮肉られる始末だ。

 何のことかといえば、日本企業の間で果てしなく続くRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の一大ブームの件だ。30年以上にわたるIT記者としての長い経験の中でも、これだけのブームは見たことがない。「RPA、恐るべし」である。

 ブームの中心地が日本である点も、これまでのIT関連のブームとの違いだ。従来、IT系の名だたるバズワードの発信地・中心地はほぼ米国と決まっていた。

 最近の話でいえば、AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)は日本企業の間でも大ブームで、「ITは分からない」と公言していた経営者までがAIやIoTを活用する重要性を語るほど。だが、あくまでもブームの中心地は米国だ。日本企業は米国の先進ユーザー事例やITベンダーの新技術の発表などを見聞きして、あおられ気味に追随しているのが実情である。

 しかしRPAブームは違う。もちろん米国などでもそれなりに導入が進んでいるとはいえ、とにかく日本は半端ない。日本経済や日本企業が落ちぶれたこともあり、外資系のITベンダーにとって日本市場の重要性はどんどん低下しているが、唯一RPAベンダーにとって日本市場は別格なのだ。

 一般に、外資系ベンダーのグローバルにおける日本市場の売上比率は今や5~10%にとどまるというが、RPAベンダーは売り上げの25%が日本市場からだそうだ。言い換えれば、RPAのグローバル市場の4分の1は日本なのだ。

 「この1年半でRPAツールが爆発的に売れるようになったよ」と、先日会った大手SIerの経営者もホクホク顔だ。「いやぁ失敗したよ。もっと価格設定を高くしておけばよかった。2~3倍、いや5倍の価格でも売れたんじゃないかな」などと軽口まで出る始末。さらにRPAセミナーはどこもかしこも大入り満員だ。「短期間に何度セミナーを開催しても即座に埋まる」という証言もある。

 そんな訳で冒頭に書いた通り、私は白旗を揚げたくなったのだ。だが本当に白旗を揚げる前にもう一度だけ言っておく。本当にこのまま無原則にRPAを導入してよいのか。

 RPAは伝票などのデータ入力など、オフィスのパソコンで人によって行われてきた業務作業を自動化する。そして自動化の先にあるのは、業務のブラックボックス化だ。RPAを導入して半年、1年たてば業務作業の手順どころか業務の内容そのものが、誰にも分からなくなるぞ。そんな状態でRPAに何かトラブルがあれば……考えるだけでも恐ろしい。

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