前回の「極言暴論」の記事は多くの読者から反響があった。これまで見落としていた「SIerの下請けベンダー化」の観点からまとめたところ、Twitterなどを通じてたくさんのコメントが寄せられたのだ。中でも「SIerの組織は大口客単位の完全な縦割りで、それぞれの組織は担当する客の企業文化に染まる」「残業量や取得できる有給休暇の日数は客次第。ホワイト職場とブラック職場が一企業に併存する」との指摘はとても参考になった。

 今回はこうした読者のフィードバックから得た気づきを基に、SIerの下請けベンダー化問題をさらに掘り下げてみよう。

 SIerの下請けベンダー化の詳細は前回の記事を参照してほしいが、要点を簡単に記しておく。SIerにとっての重要顧客である大手ユーザー企業には、SIerがべったりとへばり付く。これを「パートナー戦略」という。ただし戦略と言うにはあまりに属人的で、SIerや下請けITベンダーの担当技術者の顔ぶれは長い間ほとんど変わらない。たまに新人が入ってきたら、新人もその客の担当技術者として長く仕事を続けていく。

 SIerの技術者らはパートナー関係にある客に対する専任技術者となるわけだ。専任技術者になると外の世界、つまり他の企業をほとんど知らないままに時を過ごさざるを得ないため、客のIT部門と同等レベルの知見や常識しか持ち合わせなくなる。客の業務ぐらいは分かったとしても世間を知らないから、業務改革の提案や最新技術を活用したソリューションの紹介などは考えられない。ただただIT部門の下請け仕事を得るためご用聞きにいそしむばかりになる……。

 実は、前回の記事を公開した時にひそかに恐れていたことがある。SIerの下請けベンダー化の観点を長く見落としていただけに、「木村はいつも偉そうな記事をドヤ顔の写真と共に載せてきたのに、そんなことにも気づかなかったのか」といったシニカルな批判が来ることだ。ところが実際にはSIerの技術者らから「全くその通り」といった賛同の意見が数多く寄せられ、シニカルな批判は1つもなかった。

 SIerの技術者、あるいは元SIerの技術者なら当然、IT部門の下請けと化したSIerの状況は実感として知っているはずだ。だが思うに、人月商売やIT業界の多重下請け構造のように強いキーワードでレッテルを貼りやすい問題ではなかったため、これまで明確に意識される機会がなかったのだろう。私が突然、「下請けベンダー化」というレッテルを貼り付けて「問題だ!」「問題だ!」と騒ぎ出したものだから、皆さんの意識に上ってきたのだと思う。その結果、多くの読者から賛同と共に有益なコメントが寄せられたというわけだ。

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