なぜSIerはユーザー企業にまともな提案ができず、単なるご用聞きになってしまうのか。この問題については「極言暴論」で何度も取り上げてきた。だが最近、問題の本質的な原因について見落としていたことに気が付いた。不明の至りである。何のことかというと、SIerが「システム子会社化」あるいは「下請けベンダー化」したことで、客のIT部門と同等レベルの知見しか持ち合わせなくなったという衰退である。

 ユーザー企業側の話から書き起こさないと、この問題の本質が見えてこないので、少し回りくどくなることをご容赦願いたい。まず、ユーザー企業のIT部門はシステム開発を丸投げせざるを得ない。「うちは内製している」と言い張るIT部門もあるが、詳しく話を聞いてみると一部のシステムを手作りしている程度で、基幹系など大規模システムの開発ではどこもかしこも丸投げである。ユーザー企業は本質的に内製力など持てないのである。

 理由は簡単で、日本企業は終身雇用を前提としているからだ。企業のシステム、特に大規模な基幹系システムは開発フェーズと運用フェーズで必要な要員数が大きく異なる。昔のように常時、何らかのシステム開発案件があるならともかく、今は大規模開発はたまにしかない。もし内製しようとするなら、開発のピークに合わせて技術者を雇用しなければならないが、終身雇用が前提である以上、それはどだい不可能だ。

 ところが、誰にも明確なこの前提をスルーして“正論”をぶつ困った識者がいる。彼らはこんなふうに言う。「米国では技術者の7割がユーザー企業側にいて、基幹系システムなどを内製している。それなのに日本企業はITベンダーに丸投げ。このままでは企業だけでなく日本の競争力にかかわる」。典型的な“米国出羽守(「米国では」のかみ)“である。だが、この手の識者は米国出羽守であるにもかかわらず、米国の「真実」は決して語らないから、なお困る。

 米国企業は比較的容易に社員を解雇できる。だから大規模システムであっても開発のピークに合わせて、技術者を雇用して内製できる。開発が終われば、大半の技術者は会社を去っていくのだ。終身雇用が根強く、こうしたドラスチックな人事政策を取れない日本企業は、小規模システムはともかく基幹系のような大規模システムを内製できるわけがないのである。だからこそSIerのような人月商売のITベンダーが必要だったわけだ。

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