米アップルが2018年10月26日に発売した「iPhone XR」。最大の特徴は価格を749ドルに抑えたことだ。日本のApple Storeで販売されるSIMフリー版は8万4800円(64GBモデル、税別)から。2018年モデルで唯一、10万円を下回る価格を実現した。筆者は、iPhone XRが2018年モデルのスタンダードとして販売の柱になると考えている。

 iPhone XRは、999ドルからの「iPhone XS」や1099ドルからの「iPhone XS Max」に比べて価格が250~350ドル安い。iPhoneの平均販売価格の低下を招きかねないが、iPhone XRの749ドルという価格は2017年発売のiPhone 8より50ドル高く、iPhone 8 Plusより50ドル安い水準となっている。より大容量のモデルを選ぶ人が多ければ、結果的に平均販売価格の上昇につながるのではないだろうか。

アルミはカラフルな展開に最適

 iPhone XS/XS Maxは、5.8インチまたは6.5インチの有機ELディスプレー、ギガビット級LTEへの対応、ステンレススチールのフレーム、2つの背面カメラなど、現在のアップルにおける最高のものを盛り込んだ製品となった。

 ここから250ドル安くしたiPhone XRは、引き算の世界となる。需給ひっ迫で価格が高止まりしている有機ELディスプレーは液晶ディスプレーに変更され、ギガビット級LTEにも対応しない。背面のカメラは広角26mm/f1.8のみが残り、望遠レンズが省かれた。ステンレススチールのフレームは、航空宇宙産業などで用いられる7000シリーズのアルミニウムとなった。

 アップルでワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるフィル・シラー氏は筆者のインタビューに応じ、これまで人々に受け入れられ、時代を作ってきた製品は「最上位機種ではなく独自のニーズを満たした画期的な製品」とした。

 シラー氏が話す「独自のニーズ」とは何だろうか。

 一つは、きょう体が6色というカラフルな展開だ。アップルでデザイン最高責任者を務めるジョナサン・アイブ氏が膨大なカラーパレットから最適な6色を選んだという。その過程でガラスやアルミニウムのカラーリングとのマッチングを注意深く行った。

 iPhone XSのゴールドがそうであるように、ステンレススチールに色を付けるとガラス面よりフレームの印象を強くしてしまう。美しい光沢があるからだ。一方、アルミニウムをマットに仕上げると、背面の色に注目がいく。

 確かにアルミニウムはステンレススチールのフレームより価格が安くなるかもしれないが、カラフルなデバイスを実現するうえではむしろ最適な素材とも言える。

XRのほうが明るく撮影できる

 もう一つのカメラにも新たな価値が付与された。これまでポートレート写真(背景をぼかす効果)は望遠レンズを主体に実現していたが、iPhone XRはメインの広角カメラだけである。シラー氏は、このおかげで暗所でのポートレート撮影をより明るく撮影できるとした。望遠レンズはf2.4で、広角レンズのf1.8より暗いためだ。

 若者を中心にポートレート撮影を多用する人は、むしろiPhone XRのほうを好む可能性が高い。こちらもコストカットで生まれた新たな価値と言える。