米アドビが2018年10月に開催した年次イベント「Adobe MAX」。2015年に6500人だった参加者が今回は1万4000人にまで拡大した。主力アプリケーションのサブスクリプション制への移行が成功していることを表している。

 2015年のAdobe MAXは、新しいデバイスのラッシュだった。米マイクロソフトの継続的なスポンサーシップが奏功し、ビデオや3Dグラフィックスを中心にクリエーターのMac離れが加速していたのもこの頃からのトレンドだった。マイクロソフトがタッチパネル対応のPCを拡充させ、アドビはこれに応えるように同社アプリケーションでタッチ操作やペンを生かせるようにしてきた。

 しかし、2015年のAdobe MAXはマイクロソフトだけではなかった。米アップルは12.9インチの「iPad Pro」と「Apple Pencil」を発表し、Adobe MAXに持ち込んだのだ。アドビコミュニティーはすぐに反応したが、iPadがクリエーティブな現場で活躍する場面は限られていた。MacともWindowsとも違う、iPad Proで動作するプロ向けのクリエーティブアプリがなかったからだ。

Photoshopのフル機能が動作

 今回のAdobe MAXでキーデバイスとなったのはiPadだった。アドビでクリエーティブ製品を総括するスコット・ベルスキー氏が、2019年にフルバージョンの「Photoshop」をiPad向けにリリースすると発表したのだ。そして、アップルのワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントのフィル・シラー氏を壇上に招いた。

アップルのワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントのフィル・シラー氏(左)がサプライズ登壇
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 実は、iPad ProとApple Pencilが登場した3年前から、アップルとアドビはPhotoshopのiPad向け提供で連携してきた。アドビは30年来のソースコードを見直し、iPadで全ての体験を実現できるようにするという。おそらくだが、Photoshopの核となるコードをほとんど新しく書き直しているのではないか。

 iPad向けのPhotoshopはプロトタイプの動作が素晴らしかった。筆者が試したところ、90以上のレイヤーがあるPSDファイル(Photoshopのファイル形式)でも、あらゆる操作をスムーズにこなすことができた。2019年のリリースといっても、そう遠くないタイミングで登場するのではないかとみている。

iPadでAR編集やドローイングも

 シラー氏は同社がAR(拡張現実)に力を入れていることも強調した。アドビもこれに呼応するように、アップルとの密な連携でAR編集環境を実現しているとアピール。「Project Aero」と呼ぶAR編集アプリのデモをパートナーの独アディダスとともに紹介した。アドビのARアプリは現状、iOSが搭載するARKitにフォーカスして開発されているため、こちらも両社が歩調を合わせていることになる。

 このほか、iPad向けに2019年のリリースを予定する「Project Gemini」と呼ぶドローイングアプリも注目である。驚かされるのは、油絵や水彩画のブラシを紙に落としたときに起こることを、時間の経過も含めて再現している点だ。油絵の具を重ねて塗れば紙のテクスチャは消えていく。水彩絵の具がにじみながら広がっていく様子もリアルタイムで進行する。

 Apple Pencilによる入力を素早く処理することはもちろんだが、そこから先に手作業で起こることをアプリで忠実に再現しているのだ。