米アップルは2018年9月12日のスペシャルイベント「Gather round.」でiPhoneの2018年モデルを発表した。iPhone XSはiPhone Xの後継、iPhone XS Maxはその大画面モデル、iPhone XRは液晶ディスプレーやシングルカメラなどを採用して価格を抑えた廉価版となった。

 64Gバイトモデルの価格は、iPhone XRが749ドル、iPhone XSが999ドル、iPhone XS Maxが1099ドル。この価格が披露されると会場は凍り付いた。多くの人々が、iPhone XSの価格をiPhone Xの初期価格である999ドルから100ドル程度下げると考えていたからだ。

 性能はほぼ同じで安く、カラフルな端末を選べるiPhone XRに人気が集中し、iPhone XSは失敗するのではないか──。そんな見方すら出ているが、もしその通りになるとすればアップルの戦略通りだ。

XRは直近の平均販売価格を上回る

 アップルがiPhone XSの価格を下げなかった理由は明快だ。2017年モデルではiPhone Xを999ドルから、iPhone 8を699ドルからとした。例年と違ってiPhone 8が好調を記録し、飽和状態のスマートフォン市場で販売台数を維持しながら売上高を20%高めることに成功した(2018年4~6月期の前年同期比)。

 iPhoneの価格はそれまで649ドルからスタートしていたが、実はiPhone 8で50ドル引き上げた。もちろん、大容量のストレージや、999ドルのiPhone Xと同じA11 Bionicの搭載などで性能や機能を高めたうえでのことだ。単に価格を上げたわけではないが、iPhoneの1台当たりの平均販売価格は724ドル(2018年4~6月期)と、大きく上昇した。

 今後は買い替えが中心で新規の需要を見込みにくくなる中、売上高を確保していく方法は1台当たりの平均販売価格を高めることだ。ただ、2018年モデルで999ドルからのiPhone XSシリーズだけとしてしまうと販売台数の激減を招き、売上高全体の6割を占めるiPhoneビジネスの崩壊につながりかねない。そこで登場したのがiPhone XRというわけだ。

 iPhone XRの価格は749ドルからと昨年で言えばiPhone 8とiPhone 8 Plusの中間に位置するが、画面サイズはiPhone 8 Plusの5.5インチより大きい6.1インチ。250ドル高いiPhone XSと同じA12 Bionicやカメラセンサー、ステレオスピーカーなどを備え、新しい体験を十分に堪能できる。安心してこのモデルを選べるのだ。

 iPhone XRの749ドルは、直近(2018年4~6月期)の平均販売価格である724ドルをやや上回り、2017年10~12月期に記録した平均販売価格の796ドルを約50ドル下回る水準だ。当然、大容量モデルもあるため、iPhone XRが販売の中心になったとしても平均販売価格の維持または引き上げを期待できる。

 こう分析すると、2018年モデルの主力はiPhone XRであり、iPhone XSシリーズはiPhoneの最高峰に位置づけられるブランド戦略に近い存在と考えてよいだろう。

 他のラインアップも整理した。349ドルからのiPhone SEをはじめ、iPhone 6s、iPhone 6s Plusは姿を消した。併売モデルはiPhone 7が449ドルから、iPhone 8が599ドルからとなり、iPhone 8 Plusは64Gバイトモデルで699ドル。最新のiPhone XRに比べて50ドルしか差がなく、最新プロセッサや大画面、Face IDなどの新機能を利用できるならとiPhone XRを選ぶユーザーが多そうだ。まさにこれを狙っているように見える。

iPhoneのラインアップと価格(撮影:松村 太郎)
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