独自方式撤退に拍車がかかるか

 中でも興味深いのは、CVS Pharmacyの動きだ。CVS Pharmacyはこれまで、「CVS Pay」と呼ぶ独自の取り組みを進めてきた。CVS Payは「CurrentC」と呼ぶバーコードベースの決済方式となり、CurrentCはCVS Healthをはじめ、WalmartやBest Buy、Rite Aidなどの小売チェーンが加盟する「MCX(Merchant Customer Exchange)」が推進してきた。いわば、Apple Payの拡大を阻む側だった。

 しかし、CurrentCは2017年にJPMorgan Chaseに売却され、Best BuyとRite AidはApple Payへの対応を開始。WalmartとCVS Healthは対応を見送ってきた経緯がある。

 CVS Payは会員カードの提示と決済を1度で済ませられるほか、処方せんによる薬の受け取り認証なども兼ねる。ドラッグチェーンならではの利便性を打ち出してきたが、Apple Payには逆らえなかった。決済の仕組みに安心感があり、特定アプリではなく端末に登録したカードで様々な店舗で買い物ができる点などを評価し、Apple Pay対応に踏み切ったとみられる。

米国モバイル決済のトップはスタバ

 もっとも、CVS Pharmacyのように独自のアプリと決済を組み合わせるアプローチは必ずしも間違いではない。その好例が、米Starbucks(スターバックス)である。実は、米国のモバイル決済で最大規模を誇る小売チェーンが同社だ。

 米eMarketerによると、米国における2017年のモバイル決済のユーザー数はStarbucksが2070万件に対し、Apple Payは1990万件だった。2018年の見通しはStarbucksが2340万件、Apple Payが2200万件。順位は2022年まで変わらず、StarbucksがApple Payをリードしたまま、それぞれが拡大していくと予測している。

米国におけるモバイル決済のユーザー数(2018年予測)
出所:米eMarketer
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 Starbucksアプリはバーコード決済やポイント付与のほか、メニューを事前にオーダーしたりギフトカードをメールで送ったりする仕組みを用意する。どちらかと言えば、決済よりも店舗やブランドの体験価値向上に力を入れたアプリとなっており、Apple Payでは実現できていない要素も多い。

 裏を返せば、アップルはApple Payを含めたWalletアプリを発展させる余地がまだまだあると言える。売上高7位のCVS HealthがApple Payに対応したことで、次の注目はトップのWalmartだ。アップルはなんとしても取り込みたいはずで、今後どのような戦略を打ち出してくるかが注目となる。

松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
松村 太郎(まつむら たろう) 1980年生まれ。米カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に『LinkedInスタートブック』(日経BP社)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、『ソーシャルラーニング入門』(日経BP社)など。