米国の外交摩擦を受け、米アップルが最も懸念していた事態が顕在化しつつある。iPhoneボイコットだ。トルコのエルドアン大統領は米国による経済制裁に対抗し、米国の電子製品や自動車、酒類、コメ、石炭への追加関税を決定。その中で名指ししたのがiPhoneだった。

 エルドアン大統領は国営放送で「米国にiPhoneがあるなら、他方に韓国サムスン電子もある。トルコ製のスマートフォンもある」と語り、iPhoneが米国製品の分かりやすい例として取り上げられた。もっともiPhone自体は中国で製造されており、米国製の電子製品に当たるのか、さらにはその適用開始時期なども明らかになっていない。

勝ち目のない戦いを挑むトルコ

 2018年8月にトルコの通貨リラが急落する「トルコショック」が起こったが、米国とトルコを巡ってはもともと別の問題があった。

 トランプ政権は、2016年7月にトルコで発生したクーデター未遂事件に関与したとして逮捕、起訴されていた米国人牧師アンドルー・ブランソン氏の釈放を要請。トルコ政権がこれを拒否した。

 そもそもブランソン氏が拘束された背景には、エルドアン大統領の選挙対策があった。エルドアン政権は米国在住のイスラム教指導者フェトフッラー・ギュレン師をクーデター未遂事件の黒幕と断定。エルドアン大統領は「米国がギュレン師をかくまっている」として引き渡しを要求したが、米国が拒否した。トルコもブランソン氏の釈放を拒否し、米国による経済制裁が発動した。

 これとは別の問題として、トルコ中央銀行の機能不全がある。インフレが進行しているにもかかわらず、エルドアン大統領の意向により政策金利を引き上げずにいる。2018年7月には市場の予想に反して政策金利の据え置きを発表。これを受け、トルコリラが急落した。

 このように今回のトルコショックはエルドアン政権の経済政策の失敗と、対米強硬姿勢という別々の要因が重なって起こっている。それにもかかわらず、トルコは米国を相手に勝ち目のない関税合戦を挑んでいる。

 トルコはNATO(北大西洋条約機構)に加盟し、欧州に安価な労働力で生産性を供給する役割を果たしてきた。しかし、エルドアン大統領はイランとの関係強化をはじめ、欧米との関係を良好に保つつもりがないとの見方も出ている。