土砂災害の発生頻度が高まる昨今、発災直後の応急対応は官の出動に加えて、技術を持つ民の力が欠かせない。国や自治体などからの要請があれば、建設コンサルタント会社や建設会社は即座に出動しなければならない。そのためにも各社は全国の事業所に、災害対応に当たれるような体制を整えている。

2018年7月の西日本豪雨で天然ダムが発生した京都府福知山市の谷河川(たにごがわ)。府からの要請を受けた日本工営は土砂崩れで山道が不通の中、現場に入って天然ダムの概要を調査した(写真:日本工営)
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 建設コンサルタント大手の日本工営の例を見てみよう。近年、自治体などからの出動要請が増えている同社。特に2018年は西日本豪雨の影響を受け、大阪支店だけでも、延べ100件の初動要請に応えた。同社で土砂災害の対応に当たる部隊は国土保全事業部だ。防災部と砂防部に分かれ、全国に170人超の技術者を配置している。

 西日本豪雨の影響で河道閉塞が発生し、大規模な天然ダムが見つかった京都府福知山市の谷河川(たにごがわ)は、日本工営が発災の初動から携わった現場の1つだ。国土交通省は土砂災害のTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の高度技術指導班を派遣して応急対応を支援。日本工営大阪支店国土保全事業部の岩佐卓実部長は、「現場に入って状況調査や警戒監視に当たった」と話す。

 岩佐部長らが府からの要請を受けたのは豪雨が収まりつつあった18年7月9日だった。由良川の支川である谷河川では7月7日未明に地滑り性の深層崩壊が発生したと見られ、大量の土塊が雨水をせき止めていた。岩佐部長は、「山道が崩れていたため、発災現場に到着できたのは7月12日だった」と振り返る。

日本工営大阪支店国土保全事業部の岩佐卓実部長が谷河川の天然ダムを調査した際のスケッチ。ゴルフなどで使う距離計を使っておおよその土塊量を推定した(資料:岩佐卓実・日本工営大阪支店国土保全事業部長)
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谷河川の断面図スケッチ(資料:岩佐卓実・日本工営大阪支店国土保全事業部長)
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 現場に入った岩佐部長は、まず被災規模を推定した。ゴルフで使う距離計などを活用して、現場の状況を手書きでスケッチに残す。これらの資料を基におおよその土塊量を推計した。当時のスケッチを見ると地滑りの奥行きは180m、幅は110mと書かれている。「土砂の滑落部分の高さや山の傾斜から、地滑り層の厚さは30mから40mあると予測。これら計測値から、土塊量は少なく見積もっても30万m3以上あると判断した」(岩佐部長)

谷河川で発生した天然ダムの概要(資料:日本工営)
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 現地の調査後、府と日本工営は、天然ダム監視システムの設置や、応急の砂防堰堤(えんてい)の設計に取り掛かる。恒久的な対策工事が完成するまでの間、2次災害による被害を低減するためだ。台風来襲などの集中的な降雨で天然ダムの水位が上昇すれば、大規模な土石流が下流に位置する集落に押し寄せる恐れがあった。

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