2019年10月の台風19号による土砂災害の件数は、1つの台風としては国土交通省が集計を始めた04年以降で最多となった。18年は土石流と地滑り、がけ崩れによる被害が最多となる3459件を記録。大型台風の来襲などを受けて、土砂災害の激甚化が著しい。同省によると全国の土砂災害警戒区域は、推計で約67万カ所にも及ぶ。私たちはどのように土砂災害に対応すべきか。企業や研究機関における最新の取り組みを追った。

 土砂災害の1つである「地滑り」は、重力で斜面がゆっくりと下方に移動する現象だ。土塊の移動量が大きくなるため、発災すれば甚大な被害が予想される。地滑りの予兆を検知する計器類はワイヤセンサーや振動センサーなどが存在するが、導入や管理に費用がかさむことから広範囲での活用が難しかった。北海道札幌市に拠点を置くシステム開発のエコモットは、低価格なシステムで広域エリアの地滑りを検知する「ぐらロイド」を開発。2019年2月からリースを開始した。

広域エリアの地滑りを検知する安価な検知センサー「ぐらロイド」の傾斜計子機。北海道札幌市に拠点を置くエコモットが開発した(写真:エコモット)
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 エコモット営業本部コンストラクションソリューション部の澤田幸寛部長は、「北海道や東北地方にとどまらず、豪雨災害が頻発している九州地方からも、ぐらロイド導入の引き合いが増えている」と言う。既に全国で50カ所ほどの現場に設置された。例えば、18年9月に発生した北海道胆振東部地震の被災地では、地滑りによる2次災害防止を目的にぐらロイドを導入。現在はカメラシステムと連動させて、復旧作業の現場を監視している。

 ぐらロイドの利点は、木杭(くい)に取り付けた傾斜計子機を、広範囲に複数台設置できることだ。子機は1台約6万円。ワイヤの切断によって土砂災害を検知するワイヤセンサーの設置費用が1カ所当たり約200万円なのに対して、ぐらロイドは導入しやすい価格帯に設定した。子機の傾きが設定したしきい値を超えると親機に計測データが届く。親機は複数の子機のデータを集約して、子機の異常な傾きを電子メールなどで管理者に通知する仕組みだ。

ぐらロイドのシステム概要。複数の傾斜計子機が発信するデータを親機が集める。子機に異常な傾きが確認された場合に、電子メールなどで管理者に通知する(資料:エコモット)
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 エコモット開発本部製品開発部の細川博之部長は、「通信技術やスマートフォンの進化によって、低価格な地滑り検知システムの開発が可能になった」と話す。子機にはスマホ普及で安価になったジャイロセンサーを組み込んでおり、傾斜角1度から検知できる精度がある。市販の単三電池2本で、1時間に1回通信して1年以上可動する。電池交換のみで継続使用が可能だ。

 子機から親機への通信は、低消費電力による広範囲の無線通信を可能にするLPWA(ローパワー・ワイドエリア)の一種「LoRa」を活用する。設置環境にもよるがLoRaは約1kmの範囲の通信が可能となる。従来技術では親機と子機の無線通信距離は約100mだった。

 エコモットの設立は2007年。北海道で道路の融雪システムを遠隔監視する事業から始まった会社だ。センサーと通信技術を組み合わせるビジネスにたけていたが、売り上げが冬季に集中する事業構造が課題だった。細川部長は、「当社の持つ遠隔監視技術が土砂災害検知のニーズと合致した。昨今の豪雨災害の激甚化によって利用者が増えた」と話す。

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