台風の巨大化に伴って、被災する範囲はどんどん広域化している。土砂災害などの発災箇所の特定は難しくなる一方だ。国土交通省は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と組んで、衛星画像技術によって土砂災害の起こった場所をいち早く推定し、その後の調査や復旧に生かそうとしている。

人工衛星の画像を用いた災害発生箇所の判読例。国交省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は災害時の人工衛星の活用を促進する取り組みを継続している(資料:国土交通省)
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 発災の恐れがある豪雨時は、航空機などを使った空からの目視では情報収集できない。そこで、国交省とJAXAは18年3月、「災害時の人工衛星活用ガイドブック」を作成。JAXAが14年5月に打ち上げた陸域観測技術衛星「ALOS-2」(通称、だいち2号)を活用して、土砂災害や水害による被害の把握や初動対応の迅速化を図る手順などを規定した。

 JAXA衛星利用運用センターの桐谷浩太郎主幹研究開発員は、「だいち2号の性能を理解してもらうきっかけになったのは、(15年9月の)関東・東北豪雨だった」と話す。その後も、16年の熊本地震や台風10号などで、土砂崩壊や自然ダムの発生を推定するデータを観測してきた。

2016年に発生した台風10号での人工衛星の活用事例。岩手県内で土砂が崩落した場所を推定した(資料:国土交通省)
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 だいち2号は「Lバンド」と呼ばれる電波(マイクロ波)を照射し、地上からの反射波を観測して地形や地表被覆の状態を把握するレーダー衛星だ。土砂が大きく移動した箇所で電波が散乱する性質を利用して、土砂崩壊や自然ダムを抽出する。高度約3万6000kmの静止軌道で地球の自転と同期する気象衛星「ひまわり」とは異なり、だいち2号は高度約600kmで南極と北極を結ぶ地球周回軌道を1日に約15周する。日本付近の上空を通過するのは午前0時と正午の1日2回だ。

 レーダーによる観測は光学センサーのように光は不要だ。夜間観測も可能な上に、電波が雲を透過するので天候にも左右されない。観測したデータと平時に記録していたデータとの差異を比較して、発災の可能性が高い地域を絞る。こうした情報はその後の詳細調査に使う。例えば、航空機による調査範囲をあらかじめ絞り込める。

土砂災害対応初動期の流れ。合成開口レーダー(SAR)を搭載するだいち2号は雨天でも夜間でも被災地を観測できる(資料:国土交通省)
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