国土交通省の有識者検討会は、地球温暖化による将来の気温上昇を踏まえて、治水計画の前提となる降雨量を現在の1.1倍程度に見直すよう求める提言を取りまとめた。2040年ごろまでに平均気温が現在より2℃ほど上がると想定して降雨量などを試算した。18年7月の西日本豪雨の発生は温暖化が一因だと気象庁が指摘するなど、近年は降雨量に対する気候変動の影響が無視できなくなっていた。

 国交省が設置した「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」が19年7月31日に開いた会合で示した。検討会の座長を務める小池俊雄・土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長は、「(降雨量の将来予測を治水計画に反映するのは)過去の降雨量の実績などを基に治水計画を立てるように規定した1958年以来の大きな方針転換だ」という趣旨のコメントをした。2019年8月をめどに最終報告をまとめる。

平均気温が2℃上昇した際の降雨量の変化倍率を地域ごとに示す。検討に用いた気候変動モデルでは、北海道や九州北西部の海面の温度上昇が他の地域よりも高いため、変化率が大きい(資料:国土交通省)

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が13年から14年にかけて発表した報告書によると、地球温暖化に疑いの余地はない。例えば日本近海の海面水温は近年、100年当たりで1.12℃上昇している。気温や水温が上がると空気中の水蒸気量が増え、降雨量が増加する。これまで考えられなかった規模の豪雨の発生につながる恐れがある。

 実際、15年に茨城県で鬼怒川の堤防が決壊した関東・東北豪雨をはじめ、16年の北海道豪雨や17年の九州北部豪雨など、近年は毎年のように各地で豪雨災害が頻発している。従来のように過去の降雨量の実績を基に堤防などを整備していては、増え続ける豪雨リスクに対処できない可能性がある。

 検討会は将来の降雨量を、2100年ごろに現在よりも平均気温が2℃程度上昇する「RCP2.6」と呼ぶ気候変動のシナリオに沿ったシミュレーションで求めた。RCP2.6とは、二酸化炭素の排出削減などによって今後の地球温暖化の進行を最大限抑えられた場合の将来予測だ。IPCCが提示した4つのシナリオのうち最も現状からの変化が小さい。

 それでも検討会の試算によると、100~200年に1度の降雨量が全国平均で現在の1.1倍になる。河川の流量は1.2倍に増え、洪水の発生頻度は約2倍に上昇する。

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