「2020年夏季東京オリンピックの暗部」と題した報告書。国際建設林業労働組合連盟が作成し、2019年5月14日に東京都や日本スポーツ振興センターに送付した(資料:国際建設林業労働組合連盟)
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 「2020年夏季東京オリンピックの暗部」と題した報告書が2019年5月14日、東京都や日本スポーツ振興センター(JSC)、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に電子メールで送付された。送り主は労働組合の国際組織「国際建設林業労働組合連盟」(BWI、本部スイス・ジュネーブ)。BWIは、メインスタジアムとなる新国立競技場と、選手村として使う施設を建設する晴海五丁目の現場で働く作業員へのインタビューなどに基づいて報告書を作成した。

 BWIの代表団は、18年9月に東京を訪問して建設現場を調査。19年2月にはBWIに加盟する全国建設労働組合総連合(全建総連)が、新国立競技場と選手村の現場で働く作業員を集めてアンケート調査を行った。報告書では、「聞き取りした作業員の半数は雇用契約がない」「2人の作業員が安全器具を自費で購入させられた」といった実態を指摘。「労働組合がJSCに作業員の苦情を代表して申し立てても、当事者でないため却下された」「海外からの労働者は失職や懲戒を恐れて、労働環境に苦情を言えない“恐れの文化”がある」などの声もあったという。

2019年5月に撮影した新国立競技場のスタジアム内部。19年11月末の完成を予定している(写真:大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JV/JSC)
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 BWIは報告書で、新国立競技場で施工管理業務に従事していた男性が17年4月に過労自殺したことや、選手村で18年1月に死亡事故が発生したことに触れ、「労働力不足やスケジュール遅延が安全でない労働環境を生んでいる」と警告した。特に、新国立競技場の建設現場では1カ月で26日、選手村では28日勤務した作業員がいたと報告。「危険な過労状態が続いている」と懸念を示している。

 BWIに調査協力した全建総連の担当者によると、選手村の作業員は「現場で残業ができないため、工程がかなり厳しくなっている」と話しているという。時間短縮のためにクレーンで荷を吊ったままの状態にして、その下を作業員が往来するなど、「他の現場ではあり得ない状況だ」との声も上がっている。

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