2016年5月2日に、厨房機器メーカーのタニコーで働いていた男性が弟に送った携帯電話のメール。男性はその後に自ら命を絶った(写真:武蔵小杉合同法律事務所)
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 「●●(弟の名前)君の誕生日だというのに先立つ事 本当に申し訳ない。お母さんには言っていない。ゴメン」

 2016年5月2日、都内に暮らす弟に携帯電話からメールを送った厨房機器メーカーの男性社員A氏は、その後に首をつって自ら命を絶った。当時52歳。一人暮らしだったA氏の部屋には、家族に宛てた遺書が残されていた。警察などの捜査の結果、メールを送った日の午前5時ごろに自殺したとみられる。

 A氏の母親は「会社の過酷な労働が自殺の原因」と考え、18年7月20日に渋谷労働基準監督署に労災を申請した。渋谷労基署労災課の吉田英明副所長はA氏について、「長時間労働による疲弊で発症した精神疾患が原因で、自死を思いとどまれなかったと判断した」と話す。渋谷労基署はA氏の死亡と業務の関係性を認め、19年3月25日付で労災認定した。

 A氏は、大手建設会社からホテルや飲食店の厨房設備の工事を請け負うタニコー(東京都品川区)に勤務していた。入社から26年にわたって現場管理などに携わるベテランだった。当時担当していた現場は、「赤プリ」の呼称で親しまれた「旧グランドプリンスホテル赤坂」の跡地再開発工事。元請けである鹿島の1次下請けとして、新しく建てる複合施設内のホテルに厨房機器を設置する調整業務を1人で担当していた。

 赤プリ再開発の現場でタニコーの業務が本格化したのは16年2月ごろから。複数カ所に厨房機器を設置するため、スケジュールの調整が難しい現場だった。タニコー総務部の嶋田健部長は、「(赤プリの現場は)当社のなかでも大仕事だったため、『東京プリンスホテル』の改装を担当した経験を持つベテランのA氏に現場を任せた」と説明する。

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