大阪大学の元准教授が2016年4月の熊本地震で観測したとされる地震動のデータが、別の観測データを用いて捏造(ねつぞう)されたものだとする疑惑について、大阪大学は19年3月15日、捏造や改ざんが実際にあったと認定した。当事者である同大学元准教授の秦吉弥氏(17年12月28日に退職)が亡くなっていたことも明らかにした。

 疑惑の発端は17年9月下旬。土木学会に対して観測データが不自然だとする匿名の通報が寄せられた。大阪大学に対しても同年9月~12月にかけて、不正を指摘する4回の申し立てがあったことを受けて、同大学は学識者や弁護士(学内2人、学外6人)から成る調査委員会を設置。18年2月17日から同年12月17日までに10回の委員会を開催し、論文の検証や元准教授、論文の共著者への聞き取りなどを実施してきた。

 同大学の調査委が不正を認定したのは、外部から指摘を受けた元准教授の論文44編のうち5編。このうち4編が熊本地震に関する論文で、残り1編は11年の東日本大震災で決壊した福島県の藤沼ダムでの観測データに関する論文だ。調査を受けた元准教授は、全ての論文について捏造を否定していたという。不正を認定した5編のうち1編については、日本学術振興会の科学研究費補助金13万8105円を論文掲載料に充てていた。

大阪大学の調査委員会は、5つの論文について捏造や改ざんを認定した(資料:大阪大学)
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 5編のうち、熊本県益城(ましき)町内の3地点で4月16日の本震を観測したとする論文については、防災科学技術研究所がその700mほど北に設置していたKiK-net益城の観測データを基に、元准教授がデータを作成した可能性が高いと認定した。

 根拠の1つが、3地点の加速度応答スペクトルとKiK-net益城の加速度応答スペクトルの比を、南北・東西方向でそれぞれ計算した結果。振幅比が広い周波数帯で一致した点だ。また、KiK-net益城で観測した地震動と3地点のデータの位相差が、広い周波数帯にわたってほぼゼロだった。「自然現象としては極めて特異であり、通常の地震記録とは考えられない」(報告書の資料から抜粋)。

熊本県益城町における観測地点。元准教授は、3つの臨時観測点に地震計を自ら設置したと説明していた(資料:大阪大学)
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臨時観測点での観測データは、KiK-net益城の観測データを基に作られた可能性が高い(資料:大阪大学)
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