建築よりも被写体として恵まれている

フォトコンテストを実施するうえで難しさや課題はありますか。

 コンテストのテーマは「土木施設」です。しかし、一般の人にとって何が土木で、何が建築なのかなど、必ずしも十分に理解されているとはいえません。

 応募作品を見ても、「これは明らかに建築だろう」という写真もあります。募集要項には、「私たちが普段使っている道路や橋、鉄道、公園。移動で立ち寄る空港や港。上下水道、電気、ガスなどのライフライン。災害から私たちの命を守るためのダムや堤防、防波堤など」と、土木施設とは何かを書いているのですが。

 テーマの設定の仕方にも試行錯誤があります。今回のように「あなたのお気に入りの“土木施設”」だと一定の応募数が見込めるのですが、過去のある年にテーマを「暮らしを支える土木」に変えたところ、応募数ががくんと減ってしまいました。「暮らしを支える」をどう解釈して写真に表現するのか、難しかったのかもしれません。

 とはいえ、建設コンサルタンツ協会が実施するフォトコンテストなので、「土木」は外せないテーマです。審査員だけでなく、応募しようと考えている人にとっても、土木施設を写すカメラのレンズを通して何らかの発見があってほしいと願っています。いつも使っている橋に夕日が重なった瞬間、幻想的な光景が広がっているかもしれません。

 私は建築学科の教員ですが、建築をテーマにしたフォトコンテストは意外とありません。建物が個人の所有物であったり、設計者の権利が強かったりと複雑な事情があるからです。その点、土木施設は被写体として恵まれていると思います。

 後はどうやって多くの人に土木に対する興味や関心を持ってもらえるようにするかです。最近はインフラツーリズムなどで土木施設や工事現場がしばしばテレビに登場するようになりました。一般の人が興味を持ち、訪れる機会も増えるでしょう。

群馬県で建設中の八ツ場(やんば)ダムでは、「やんばツアーズ」と名付けた現場見学会に力を入れている。写真左端にコンクリートの打設が進む堤体を見下ろす見学者の姿。2017年11月撮影(写真:大村 拓也)
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 土木に限らないのですが、東京都世田谷区が「地域風景資産」という取り組みを進めています。生活や文化が感じられる街並みや商店街のにぎわいなど、住民が愛着を持っている風景を区が選定し、みんなで守り育てていこうという活動です。

 学校の校庭にあるケヤキや桜並木、公園、古民家、寺社などに加え、橋や川堤、鉄塔、古い給水塔なども選ばれています。土木施設も地域の資産として大切にしようと、住民に認識されつつあるのです。こうした取り組みが広がれば、土木施設が果たす役割に気づき、それを計画したり設計したりする職業への関心も高まるのではないでしょうか。

(関連サイト:建設コンサルタンツ協会「建コンフォト大賞」
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