今年4月1日、ミャンマー西部で築22年の吊り橋が突如崩落し、2人が死亡した。重要部材の主ケーブルが腐食し、破断に至るという「あってはならない事故」だ。東京大学生産技術研究所がドローンで撮影した動画を交えて、現地の状況と落橋の原因を解説する。

事故後の4月7日にドローンで撮影したミャウンミャ橋の様子。南側の主塔上部を撮影後、渡河して北側の主塔の上部を撮影した。動画開始5分30秒後あたりで、崩落した橋の全体像が確認できる。橋の調査にはI&H Engineering、IHIインフラシステム、エイト日本技術開発、ヤンゴン工科大学が参加した(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)

 崩落したミャウンミャ橋は、ミャンマー最大の都市ヤンゴンから140kmほど西に位置する中央支間長183m、橋長265mの長大吊り橋だ。ミャウンミャ川に南北方向に架かる。

 同橋は、補剛桁に仮設橋などに用いる「ベイリー桁」を用い、その上に鋼板を敷設しただけの簡素な造りだった。事故の直前にたまたま現地を訪れた東京大学生産技術研究所の松本浩嗣特任講師は、「日本では見ない構造形式だが、ミャンマーには同種の橋がいくつかある。建設年が古いとこのような形式になるようだ」と説明する。

落橋の3日前に撮影したミャウンミャ橋(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)
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落橋の3日前に撮影したミャウンミャ橋の路面の様子。ベイリー桁に鋼板を載せただけの簡素な構造だ(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)
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 ミャウンミャ橋の供用開始は1996年。ミャンマー国内に30橋ほどあるという吊り橋の中でも古い部類に入る。同橋は中国の企業が設計し、ミャンマー建設省公共事業局(Public Works)が中国企業の助言を得て自ら建設した。

 長らく国際社会から経済制裁を科されていたミャンマーは中国との結びつきが強く、同橋に限らずミャンマー国内には中国企業の支援で造った橋が多い。また、ミャンマーではかつての日本のように行政が直営で工事を実施してきた経緯がある。

未明に前触れもなく落橋

 そんなミャウンミャ橋が、前触れもなく崩落したのは4月1日午前1時45分ごろ。重量18tのトラック1台が巻き込まれ、2人が死亡した。同橋は当時、通行車両に25tの重量制限を課したうえ、本来は片側1車線のところを1車線で運用していた。こうした制限と落橋の時間帯が未明だったことが重ならなければ、犠牲者はさらに増えていた恐れがある。

 ミャンマー建設省の許可を得て、事故から4日後に現地を調査した東京大学生産技術研究所の長井宏平准教授は落橋の原因について、「南側の定着部で主ケーブルが局所的に激しく腐食して破断に至り、橋全体が崩落したのではないか」と推察する。劣化したケーブルカバーの隙間などから水が浸入し、末端の定着部に滞留してケーブルの腐食が進行したと考えられる。

ケーブルが破断した南側の様子(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)
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ミャウンミャ橋の位置(写真:東京大学生産技術研究所長井研究室)
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