自動車部品最大手の独ボッシュ(Bosch)が、米シリコンバレーに設けた研究開発拠点。近藤由実氏はそこで、データサイエンティストとして働いている。シリコンバレー流の仕事の進め方を取り入れ、製造業のデジタル変革に挑むボッシュ。そこで活躍する現役のデータサイエンティストの実像に迫った。

 米フェイスブック(Facebook)の本社で2018年10月中旬に開かれた、ディープラーニング(深層学習)の大規模な勉強会「BayLearn 2018」。シリコンバレーの大手IT企業で働くエンジニアがディープラーニングに関する研究論文を、口頭やポスターなど学会形式で発表する。内容には事前に「査読」が入るのも、学会と同じだ。

BayLearnの参加者の所属先
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BayLearnで唯一の日本人査読者を発見

 BayLearn 2018の終了間際に発表された論文査読者の一覧の中に、「Yumi Kondo」という日本人の名前があった。BayLearnはシリコンバレーで働くエンジニアが手弁当で開催しているイベントであり、査読も完全なボランティアだ。主催者は査読者の名前を読み上げると同時に、参加者には査読者への感謝を呼びかけていた。

 筆者は3年連続で、BayLearnに出席している。これまでに日本人の参加者を見かけることはあったが、発表者や査読者に日本人がいたことは一度もない。LinkedInでYumi Kondo氏のプロフィールを確認したところ、ボッシュのシリコンバレー拠点で、データサイエンティストとして働いていることが分かった。日本人がシリコンバレーで、それもドイツメーカーのデータサイエンティストとして働いているのはとても珍しいこと。早速、LinkedInでコンタクトを取り、近藤氏に話を聞いてみることにした。

独ボッシュのシリコンバレー拠点で働く、データサイエンティストの近藤由実氏
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事業部門のビジネスに役立つデータ分析に従事

 初めて会った近藤由実氏は、ボッシュのAI(人工知能)に関する研究開発部門「Bosch Center for Artificial Intelligence」の「サービスチーム」に所属するデータサイエンティストだった。ボッシュにはデータサイエンティストのチームが2つある。1つは「リサーチチーム」であり、他の研究者によく引用されるようなインパクトファクターが高い論文を発表したり、特許を取得したりすることを目指すデータサイエンティスト集団だ。

 それに対して近藤氏が属するサービスチームは、ボッシュ社内の各ビジネスユニット(事業部門)に対して、データ分析をサービスとして提供する。論文を発表することもあるが、「データ分析による社内のコスト削減や新規ビジネスの創出、社会貢献などの比重が高く求められる」(近藤氏)という。

 サービスチームは事業部門にヒアリングをして、データ分析による業務改善のアイデアを一緒に考え、サンプルデータを使ったPoC(Proof of Concept)を実施する。それで効果を確認できれば、もっと大きなデータを使った本格的な分析を始める。PoCの完了が1つの区切りであり、「ヒアリングからPoCの完了までを、4~5カ月という短いサイクルで回している」。近藤氏は、サービスチームの仕事の流れをこう説明する。

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