NECが米シリコンバレーに設けた戦略子会社「NEC X」が本格的に活動を始めて半年以上が経過した。初年度は研究所が開発した3つの技術の事業化を検討し、物事の因果関係をデータから自動的に探し出す技術の製品化に動き出した。NECの社内文化の変化も目指すNEC Xの歩みを追った。

 NEC Xは、NECが世界中に設ける研究所で開発した技術の事業化を加速するための「社内スタートアップアクセラレーター」だ。「今までは研究所で優れた技術が生まれても製品になるまで3年、5年と長い時間がかかっていた。この状況を変える」。NEC Xの末村剛彦シニアバイスプレジデントは、2018年7月に同社を設立した目的をそう語る。

NEC Xのメンバー。左から菊地良太氏、末村剛彦氏、金子亮氏
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 NEC Xをシリコンバレーに設けた理由は、スタートアップを生み出し成長させるノウハウを吸収するためだ。ベンチャー企業を複数立ち上げた経験を持つPG・マドハヴァン氏を招へいしたほか、事業化支援を手掛ける米シンギュラリティ・ユニバーシティー(Singularity University)と提携。初年度は研究所が開発した3つの技術に関して事業化の検討を進めた。

 具体的には「においセンシング技術」「因果探索技術」「物体指紋技術」の3つ。中でも因果探索技術の製品化を進めるべきだと判断し、2018年12月に「イングオ(Inguo)」という社内スタートアップを設立。顧客との実証試験などを開始した。

データの中から因果関係を探索

 因果探索技術とは、物事の因果関係をデータから自動的に探し出す技術だ。一般的な統計分析手法でも変数と変数の間に相関関係があるかどうかは分かるが、そのどちらが原因でどちらが結果なのか、両者の因果関係は分からない。因果関係の有無は統計分析手法によって判断するのではなく、人間が理屈を組み立てる必要があった。

 それに対して因果探索技術では、ある変数Aと変数Bの間に因果関係があるか否かを、AB以外の変数との関係性などに基づいて判断する。すべての変数の間にある因果関係をアルゴリズムが調べ上げるため、人間が変数間の因果関係について仮説を立てる必要すら無い。

 イングオのCEO(最高経営責任者)を務める金子亮氏は、「因果探索技術の理論自体は20年前から存在するが、これまではなかなか現実のシナリオで使用されてこなかった」と語る。アルゴリズムが調べる因果関係のパターンは、変数が増えると指数関数的に増加するためだ。例えば変数が6個あるだけで、因果関係のパターンは約1400万個も存在するのだという。変数が増えると因果関係を探す計算量が爆発し、実用化が難しかった。

 ところがNECの中国研究院が近年、大量のパターンの中から効率的に因果関係の有無を探索できるアルゴリズムを開発。最大500の変数の中から因果関係を自動的に探し出せるようになった。ビジネスで活用できると判断し、イングオがこのアルゴリズムの事業化を目指すことにした。

 イングオが進めているのは「リーンスタートアップ型の製品開発」(金子氏)だ。従来のNECであれば、アルゴリズムを製品に完全に組み込んでから、その製品をどう販売していくかという視点で事業を進めていたという。それに対してイングオでは、試作品をまず見込み顧客に使ってもらい、声を聞きながら改善し続けていくアプローチを取る。

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