推定企業評価額が10億ドル(約1070億円)を超えるスタートアップは、非常に稀な存在であることから「ユニコーン」と呼ばれる。民泊サービスの米エアビーアンドビー(Airbnb)はその中でも特に異例の存在だ。株式上場を前に黒字化を実現しようとしているからだ。

 米紙「Wall Street Journal(WSJ)」によれば、エアビーアンドビーの推定企業評価額は310億ドル(約3兆3000億円)。米国のスタートアップの中では米ウーバーテクノロジーズ(Uber Technologies)の680億ドル(約7兆2800億円)に次いで2番目に推定企業評価額が高い。

2017年の年間宿泊者数は1億3000万人

 2007年秋、アパートの空き部屋に3人の旅行客を泊めたことから始まった民泊サービス「Airbnb」の宿泊者数は2017年には年間1億3000万人にも達した(図1)。2007年から2017年までの累積宿泊者数は2億6000万人であり、累積宿泊者数はこの1年で倍に増えた。Airbnbが掲載する物件は450万件で、世界最大のホテルチェーンである米マリオットインターナショナル(Marriott International)の客室数125万室(2017年)の3倍の規模にもなる。

図●Airbnbの年間宿泊者数の推移
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 そんなエアビーアンドビーだが、共同創業者でCEO(最高経営責任者)を務めるブライアン・チェスキー(Brian Chesky)氏は「2018年中のIPO(株式上場)は無い」と明言する(写真1)。そのため本当の業績は外部には不明だが、米国メディアの報道によれば同社の業績は2017年に黒字化したか、または近いうちに黒字化を果たす見込みなのだという。

写真1●エアビーアンドビーの共同創業者でCEO(最高経営責任者)を務めるブライアン・チェスキー氏
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 エアビーアンドビーが既に黒字化している報じたのは米「Bloomberg」で、2018年2月6日にエアビーアンドビーは2017年に売上高26億ドルに対して9300万ドルの黒字になったと報じた。一方WSJはエアビーアンドビーが2017年に7500万ドルの赤字になったと報じている。もっともこれは2016年11月に発表した新サービス「Experience(体験ツアー)」で1億ドル近い損失が発生したためで、民家の空き部屋などを貸し出す民泊事業そのものは黒字になった可能性が高い。

 エアビーアンドビーのようなユニコーンが、株式を上場する前に黒字を実現するのは珍しい。ベンチャーキャピタル(VC)から多額の資金を調達したユニコーンは、事業をとにかく早く成長させることに専念し、赤字のまま上場することが一般的だからだ。ウーバーが2017年12月期に計上した最終赤字は45億ドル(前年は28億ドル)にも達する。2018年2月23日(米国時間)にIPOを申請した米ドロップボックス(Dropbox)の2017年12月期決算は、売上高が11億1000万ドルだったのに対して赤字額は1億1100万ドルだった。

世界中で強化される民泊規制

 ユニコーンの中でも特に良好な経営状態を保つエアビーアンドビーだが、今後に向けた課題もある。一つは本業である民泊事業の成長維持、もう一つは新しい事業の柱に据える体験ツアーExperienceの黒字化だ。同社が2018年2月22、23日に米サンフランシスコ市で開催した記者説明会でも、この2点に関する施策に重点が置かれた。

 民泊事業の目下の課題が、世界中で広がる民泊規制への対応と、新規制の下での事業成長の維持だ。日本でも2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊法)が施行され、民泊が合法化する一方でエアビーアンドビーは届け出のない違法物件をサイトから削除する予定だ。同様の動きは米国で既に始まっている。

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