欧米の先進ユーザー企業が、量子コンピューター向けソフトウエアを開発する研究者(量子ソフト開発者)の確保に早くも動き出した。現行のコンピューターとは全く異なる原理で動く量子コンピューターへの期待が高まっているからだ。100万ドル(約1億900万円)の賞金を用意して開発コンテストを始めるスタートアップも登場するなど、盛り上がりを見せている。

 「ハイ・パフォーマンス・コンピューティングの性能向上が限界に達しつつあり、現状には全く満足していない。高度な航空物理シミュレーションにはもっともっと多くのコンピューティングパワーが必要だ。我々はコンピューティングのパラダイムシフトを求めており、量子コンピューター向けソフトウエア開発のチャレンジを始めた」。

 2018年12月に米シリコンバレーで開かれた量子コンピューターのビジネス活用に関する会議「Q2B Conference」。壇上に立った欧州エアバス(Airbus)の研究開発部門「Airbus Blue Sky」のティエリー・ボッター(Thierry Botter)氏は、量子ソフト開発者を募集する狙いをこう説明した。

エアバスのティエリー・ボッター氏
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 エアバスが「Airbus Quantum Computing Challenge」で募集を始めたのは、航空機の開発に欠かせない航空物理シミュレーションを量子コンピューターで実現するソフトウエアの開発者だ。

 同社は2020年までに量子コンピューターを導入する計画。今回の募集で選ばれた開発者はこれを使えるほか、直接的な資金援助も受けられる。

背景にスパコンのギブアップ

 エアバスが量子コンピューターに期待をかけるのは、ボッター氏も言うように、スパコンの性能向上の鈍化に不満を感じているためだ。集積回路上のトランジスタ数が1年半~2年ごとに2倍になる「ムーアの法則」が終焉(しゅうえん)しつつあることが主な原因だが、スパコン特有の事情もある。

 スパコン業界は従来、物理シミュレーションに必要となる倍精度の浮動小数点数(FP64)演算性能を引き上げることに力を注いできた。しかし、最近はこの性能向上はギブアップして、ディープラーニング(深層学習)の演算によく使う半精度やそれ以下の精度の浮動小数点数演算性能の向上に特化している。

 エアバスは年間IT予算の3%をスパコンに投じるヘビーユーザー。同社にとって、スパコンの性能向上の鈍化は将来の見通しではなく、既に現在の悩みなのだ。だからこそ量子コンピューターに期待をかけている。

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