日経クラウドファースト編集長 中山秀夫

 個人的な話になるがこの1年、親類の遺産整理に悩まされてきた。母親と親類が数人で共同所有している田舎の土地に、かつて祖母や叔父が同族経営していた会社の小さなビルが建っている。そこに住んでいた高齢の叔父が他界したのは一昨年のことだ。

 親類一同、老朽化したビルを取り壊して土地を売却することで合意していた。ところがよくよく調べてみると、すぐには解体できないことが分かった。20年以上前に解散したはずの法人が、手続きのミスでビルの所有者として残っていたのだ。法律上、ビルの解体には所有者全員の許可が必要である。

 しかし許可を得ようにも、所有者である法人に、今は社員が1人もいない。役員だった祖母も叔父も亡くなっている。母親からこの難題を押しつけられた筆者は、友人のつてを頼りにこの問題を引き受けてくれる弁護士を探し、ようやく法的な解体許可を得ることができた。

 ITとは何ら関係のない遺産整理の話を持ち出したのは、日本人のリスク管理に対する捉え方に言及したいためだ。叔父が亡くなる前から、叔父の命は「もう長くはない」ことを親類は皆、分かっていた。それならば、叔父が生きているうちから、ビルを解体する話を始めていればよかった。すると所有者として法人が残っており、会社の清算が必要なことがもっと早く判明し、スムーズに法的な手続きを進められたはずだ。

 だが親類は誰も「叔父が死んだらどうするか」ということを口にしなかった。理由は「縁起でもない話」だからだ。口にすると、それが現実になってしまうかもしれないと考える人がいる。この話、システム開発の現場でも思い当たる節がないだろうか。

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