日経FinTech編集長 岡部一詩
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 「非常に重い選択だった」。

 ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)の横田浩二取締役執行役員は振り返る。2020年度にモバイル専業銀行を新設するFFGは、新銀行の勘定系システムをスクラッチで開発する決断をした。地方銀行がパッケージ製品を使わずに勘定系システムを構築するのは珍しい。しかも、マイクロサービスという新しいアーキテクチャーを採用する方針だ。

 即断即決だったわけではない。「銀行のシステムが止まればどれだけ大変かは身をもって経験してきた」(横田取締役)からこそ、全く新しい勘定系システムの構築を巡るリスクも心得ている。海外製品も含め、最終的には4~5つのパッケージ製品に絞ってぎりぎりまで可能性を探ったが、「サービスを本当に高速回転で作れるかというと、どうしても制約がある」と、横田取締役はスクラッチ開発という重い選択をした理由を語る。

ふくおかフィナンシャルグループの本社
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 勘定系システムは、SoR(システム・オブ・レコード)の代表格だ。何より優先されるのは安定稼働であり、積極的な機能追加の対象ではないと考えられがちである。10年以上前から抜本的な刷新に手をつけずにいる銀行も多い。しかし近い将来、勘定系システムの出来が銀行の競争力を左右する日が来るかもしれない。背景にあるのは、BaaS(Banking as a Service)の機運が高まっていることだ。

重厚長大な勘定系にBaaSは難しい

 BaaSとは、銀行機能を外部事業者向けに提供するサービスのことを指す。例えば旅行サイトが銀行から機能提供を受け、海外旅行を検討している顧客に少額の貸し出しをセットで提示するといったことが可能だ。手持ち資金に不安があって購入を迷っている顧客に、最後の1クリックをさせることができるかもしれない。昨今、EC(電子商取引)で流行し始めている後払いサービスと同じだ。

 本来、小売業やサービス業といった非金融機関が貸出業務に乗り出すには与信ノウハウの蓄積やライセンス取得が障壁になるが、BaaSの形を採ればハードルを下げられる。銀行から預金、融資、決済といった機能を借り、あたかも銀行のようなサービスを洗練した形で提供する「ネオバンク」という業態が海外で登場して久しい。

 BaaSやネオバンクの波は、日本でもそこまで来ている。先駆けになったのは、2018年7月に始動したGMOあおぞらネット銀行だ。当初から「プラットフォーム銀行」を掲げ、エンドユーザー向けに銀行サービスを提供する一方、積極的に事業者向けのBaaSを手掛ける方針を打ち出した。翌2019年5月には、HISが同行と協業して銀行サービスに乗り出すことを公表している。

 同様のコンセプトを掲げる銀行はほかにもある。住信SBIネット銀行は2018年10月にネオバンク事業部を発足。事業会社向けに、銀行機能の提供を含めたコンサルティングに乗り出した。新生銀行グループは2019年度中にも、「ネオバンク・プラットフォーム」の提供を始める計画だ。

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