日経SYSTEMS編集長 森重和春

 ここ1~2年で、情報システムの開発や運用に関わる人が目にすることが多くなったキーワードが、「デジタルトランスフォーメーション」や「デジタルシフト」だろう。ざっくりいえば、デジタル技術を活用して、新しいビジネスを生み出したり、ビジネスや既存の業務を変革したりすることだ。デジタル変革は、今や多くのユーザー企業にとっての命題である。AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)といった技術の裾野の広がりが、この動きを加速させている。

 では、どうやってデジタル変革を実現していけばよいのか。筆者は、情報システム開発という視点から、開発プロセスの見直しが必要だと考えている。そのための方法として注目している手法の1つが「デザイン思考」だ。デザイン思考について、システム開発の現場における注目度は高い。だが、実践している現場はまだ少ないという問題意識を持っている。

 情報サービス産業協会(JISA)が2018年6月に発表した「情報技術マップ」によると、技術者が今後利用すべきと考えている要素技術として、デザイン思考のランキングは118個の要素技術のうち6位と高い注目度を得ている。

 一方で、実践している企業はまだ少数というのが実態のようだ。情報技術マップの調査によると、既に利用していることを示す「SI実績指数」のランキングは、118件中78位にとどまっている。

RFPを用意できない案件に応える

 そもそも、デザイン思考はなぜITの現場で注目されてきたのか。デザイン思考は、企業や組織が課題を発見し、それを解決する新しいサービスを作り出すための考え方のこと。デザイナーが製品を生み出す過程の手法や考え方を基にしたものとされる。情報システムの開発で注目されるようになったのは、デザイン思考の考え方やそれに基づくプロセスが、企業が求めるデジタル変革を実践していくための手法としても適しているからだ。

 従来情報システムの開発では、既存の業務をITによって自動化する案件が多く、システム化における要件は明確だった。どのような機能や性能を備えるシステムを作ればよいかをユーザーが把握しており、開発を外注するに当たってもRFP(提案依頼書)をしっかり作ることができた。開発者は、RFPに基づいてユーザーにヒアリングし、要件を決めていけばよい。

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