日経クラウドファースト編集長 中山秀夫

 大手パブリック・クラウド・サービスで、AI(人工知能)の開発を自動化する機能が進化している。

 従来、ユーザー独自のAIを開発するには、機械学習に精通した専門家が必要だった。理由の1つは、AIのチューニングに専門スキルが求められることだ。スキルが不足していると、AIの精度を上げられない。

 しかしこのハードルが下がりつつある。米アマゾン ウェブ サービス(Amazon Web Services)と米マイクロソフト(Microsoft)という大手クラウド事業者が2018年に相次いで、AIの精度を高める自動チューニング機能を投入したからだ。

 AWSは「Amazon SageMaker」、Azureでは「Azure Machine Learning service」というAI開発・実行環境サービスが自動チューニング機能を備える。

 自動チューニング機能を持つAI開発環境のベンダーとしては米データロボット(DataRobot)が先行していたが、AWSとAzureという大手クラウドが本格的にキャッチアップし始めたという構図だ。

機械学習の専門家と遜色ない正解率を達成

 「自動チューニングといっても、機械学習の専門家によるチューニングには遠く及ばないだろう」。筆者は当初そう考えていたが、機械学習のある専門家が実施した検証結果を見て認識を改めた。

 Azure Machine Learning serviceの自動チューニング機能(Automated Machine Learning)によって、0~9の手書き数字の認識AIを開発したところ、機械学習の専門家と遜色ない正解率(accuracy)98.3%を達成したという。

 この検証では、正解率のレベルを客観的に評価するため、特定テーマのAI開発を世界的に競い合う「Kaggle」というWebサイトの課題とデータを用いた。当該課題で正解率98.3%は、参加する2700チームほどの中において約1300位(2019年1月時点)。Kaggleの参加チームのレベルは総じて高く、中位でも大いに評価できるという。

 しかも特筆すべきは所要時間だ。AIの自動チューニングに要した時間は、開発環境の構築を含めて約18分。機械学習の専門家であろうと、人間では不可能なレベルである。

 もっとも現時点で、機械学習の専門家が不要になったわけではない。

 この検証で開発したのは、手書き数字の認識という比較的単純なAIであり、自動チューニングを適用しやすかった。さらに、自動化できているのはAIのチューニングという工程だけ。その前工程に当たる「学習データの作成」は自動化できていない。自前で学習データを用意できなかったり、複雑なAIを開発したりする場合は、機械学習の専門家が必要である。

 逆の言い方をすれば、自前で学習データを用意できる、比較的単純なAIを開発する、という条件なら、専門家がいなくても独自のAIを開発できるようになった。AIの自動開発はこのレベルにまで達した、というわけだ。

 今後、学習データの作成や複雑なAIへの適用に関してクラウドサービスが進化することで、AI開発の工程の大部分を自動化できるようになるはずだ。ユーザー企業の業務担当者が自分たちでAIを開発する時代が近い将来に到来する。

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