「米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)は1時間に1000回デプロイしている。日本では1日に10~20回デプロイするベンチャー企業が出てきたが、果たして一般企業はどうか。年1回か2回ではないのか」。強烈な数字の差を例に日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の後れを指摘するのは、一般社団法人日本CTO協会の広木大地理事だ。同協会はその課題解決に乗り出している。

日本CTO協会の広木大地理事(左)と松岡剛志代表理事
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 日本CTO協会は「日本の企業経営に先端のテクノロジーを」というミッションを掲げて2019年9月2日に立ち上がった。300人以上のCTO(最高技術責任者)が集まっているという。CTOとは自社のコアビジネスに直結する製品やサービス、システムで使う「技術」全般を取り仕切る責任者だ。技術を選定したり、いつ技術を置き換えるかを計画したりする。技術者組織の運営に責任を持つ場合もある。

ポイントは2つの「DX」

 日本企業のDXの取り組みは2020年に一段と増えそうだ。IDC Japanは2019年12月12日に公表した「2020年国内IT市場の主要10項目」の中で、2020年の国内ICT市場は2019年比1.3%減となる一方、「DXに向けた支出は着実に増加する」としている。「自社に本当に必要なDX」や、従来の情報システムとの連携も含めた全体最適の動きが強まるという。

 日本CTO協会の広木理事は今のデジタル時代に企業が備えるべき能力を「超高速な仮説検証能力」と定義する。素早く市場に出し、使ってもらい、そこで仮説を検証して様々な調整をしながら事業を伸ばしていくという意味だ。冒頭のアマゾンのデプロイ回数はこの能力の高さを示している。

 超高速な仮説検証能力を得るために必要な取り組みが「2つのDX」だという。1つはご存じ「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」だ。企業がデジタル技術を使って自社やビジネスを変革する取り組みである。今「DX」といえばデジタルトランスフォーメーションを指すのが一般的だ。

 広木理事がもう1つのDXとして挙げるのが「Developer eXperience(デベロッパーエクスペリエンス、開発者体験)」である。開発者にとって働きやすく高速に開発できるようにする環境や文化、組織、システムを指す。

2つのDXのイメージ
(出所:日本CTO協会)
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 開発者体験がなぜ重要なのか。ユーザー企業がデジタルトランスフォーメーション推進室を立ち上げ、デジタル関連の技術者を奪い合うなか、開発者体験を整備しないと技術者を採用できないばかりか、技術者が離職してノウハウが流出し、既存システムが「技術的負債」に陥るからだ。技術的負債とは、中身がブラックボックスだったり、扱える技術者がいなくなったりして、手が付けられなくなり、割高な運用費や保守費がかかっているシステムである。

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