2019年、平成最後の年がスタートした。新年らしい話題は何だろうと考え、前年に続いて企業のデジタル化で始めようと決めた。1年前の2018年1月に公開したのは「デジタル化に疲れた、『お代は見てのお帰り』では辛い」という記事である。

 デジタル化のパートナーの座を狙い、SIベンダーはPoC(概念検証)をユーザーに無償提供するものの、ビジネス案件に至るのはわずか。PoCに疲れ果てたベンダーに対し、「お代を先に頂きます」と言うべきではないかと提案した。それから1年、PoC貧乏やPoC疲れは相変わらずはびこっているようだ。

 とはいえ多くの企業にとって、2019年もデジタル化が引き続き重要なテーマであるのは間違いない。どうすればうまく進められるのか、そのヒントを紹介したい。キャッチフレーズは「デジタル化はスープの冷めない距離で」。従来型の組織や仕事の進め方に関するしがらみを断ち切り、程よい距離感を保ってチャレンジするスタイルである。

 まずはユーザー企業の代表例から。デジタル化の推進に向けて新たな組織を設けた1社が、自動車部品大手のデンソーだ。同社は2017年4月、神奈川県のJR新横浜駅(横浜市)の近隣オフィスに「デジタルイノベーション室」を新設した。デザイン思考やクラウド、アジャイル開発といった最新のIT手法を取り入れ、次世代サービスの開発に取り組んでいる。

新横浜の拠点について説明する、デンソー 技術開発センター デジタルイノベーション室長の成迫剛志氏
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 デンソー 技術開発センター デジタルイノベーション室長の成迫剛志氏は、新横浜の拠点を「企業版スープの冷めない距離」と言い表す。本社のある愛知県刈谷市から新横浜までは2時間、東京支社からは30分。東京出張の際に途中下車して立ち寄れる立地を選んだ。既存部門から離れて自由な発想を可能にしながら、離れ過ぎない距離感を意識している。

 デジタルイノベーション室は、従来のIT組織とは別に立ち上げた。従来組織は既存システムの運用や保守で忙しいというのが理由の1つ。破壊的イノベーションを生み出すディスラプターと同じ土俵に立つために、デザイン思考やクラウド、オープンソースやアジャイル内製といった、彼らと同じ道具や文化を持つ体制を作る狙いもあった。デジタルイノベーション室の陣容は「当初の2人から50人、7チーム体制にまで拡大してきた」(成迫氏)。

 最新技術の活用に当たっては社外の力も頼りにしている。一例が、システム開発を手掛けるクリエーションラインとの連携だ。同社はDockerやKubernetesといったコンテナ活用やDevOps、データ分析などに強みを持つ。2018年2月には両社が資本業務提携に合意、コネクテッドカーの新時代に向けて先端技術を活用する体制を強化した。クリエーションライン本社の最寄り駅である秋葉原まで、新横浜からは電車で小一時間である。

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