「米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は怖い」。AWSが2018年11月、米ラスベガスで開催した年次イベント「AWS re:Invent 2018」の発表内容を見たときの正直な感想だ。re:Invent 2018でAWSが50以上の新サービスを発表したのは既報の通りだ。私は残念ながら現地ではなく日本で米国発のニュースを見ながら、「やはりAWSの開発力はすごいな」と、相次いで発表されるサービス内容を眺めていた。

 新サービス一覧を見ていたところ、ある1つに目が釘付けになった。サービス名は「AWS Outposts」。私が見ていた米国のWebサイトでは「オンプレミス環境にAWSを導入できる」と一言だけ説明が書いてあった。「AWS」が「オンプレミス」という言葉の破壊力は衝撃だった。

 詳細を調べるとAWS Outpostsは、AWSが自社のデータセンターで利用している自社製のサーバーに、仮想マシン「Amazon EC2」やブロックストレージ「Amazon EBS」を搭載し、顧客のデータセンターに設置するものだった。将来的にはリレーショナルデータベースサービスの「Amazon RDS」や、コンテナ管理サービスの「Amazon ECS」や「Amazon EKS」などの提供も計画中で、サービス開始は2019年の予定だ。

 AWS Outpostsはまさに、AWSの環境のままハイブリッドクラウド構成が採れるサービスだ。これには驚きを通りこして、怖さを感じた。米マイクロソフト(Microsoft)や米IBM、米オラクル(Oracle)など、オンプレミス環境に強みを持つ「旧来型」の大手ITベンダーを、一瞬にして黙らせたからだ。

 旧来型のITベンダーはここ最近、繰り返し「AWSの弱点の1つは、オンプレミス環境がないこと。顧客のシステムが全てクラウドに乗ることはほとんどない。企業システムをターゲットにしたクラウドには、ハイブリッド構成が求められている」と主張していた。

 実際にここ数年、AWSの競合となる各社はハイブリッド環境の構築を支援するサービスやシステム製品の提供に注力していた。マイクロソフトの「Azure Stack」やIBMの「IBM Cloud Private」、オラクルの「Cloud at Customer」などだ。旧来型のITベンダーは従来から強みを持つオンプレミス環境との連携を強化することで、クラウドで先を行くAWSとの差異化ポイントの1つとしたいように見えた。

 ところがAWS Outpostsの登場により、各社のハイブリッド戦略はあっという間に、AWSとの差異化の要因ではなくなってしまった。

「基幹系は乗らない」を覆す

 AWS Outpostsのように、AWSの怖さはこれまで企業システムを構築していた旧来型のITベンダーが築いてきた考え方や慣習を、いとも簡単に破壊していくことにある。

 AWSが登場した2000年代後半、「AWSはセキュリティーが不安だからEC(電子商取引)サイトのホスティング程度にしか使われないのではないか」と言われていた。オンプレミス環境を提供しているITベンダーは「AWSは障害が発生したら面倒を見てくれる人もいない。基幹系のシステムを乗せる企業はないだろう」と指摘していた。

 それから約10年。AWSは基幹系システムのインフラとして、当たり前に利用されるようになった。AGCや住友化学といった日本の名だたるメーカーが、欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)の動作基盤としてAWSを採用している。全ての社内システムをAWSに移行した東急ハンズのような企業も登場している。

 旧来型のITベンダーは、「企業システムのインフラとして、AWSはまだ使えない」とはさすがに言えなくなっていた。そこで最近、多くの旧来型のITベンダーが指摘していたのが「AWSはオンプレミス環境がないので、ハイブリッド構成が採れない」というものだったのだ。

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