カジュアル衣料品店「GU(ジーユー)」は2018年11月30日、東京・原宿に新業態の店舗を開業した。メンズ・ウィメンズすべてのラインアップを取り揃えながら、購入は専用アプリに限定するという新たな取り組みだ。

 試着だけに絞ることは、企業にとってのメリットが大きい。店舗で大量の在庫を抱え込む必要もなければ、「店舗の在庫」という考え方すらなくなる。物流センターに在庫を統一できれば、管理の面からも店舗のスペース効率という面からもメリットが大きい。レジスペースもいらないことから、特に原宿のような賃料が高い場所においては得策ともいえる。「有明プロジェクト」と称し、物流を磨き上げてきたファーストリテイリングならではの取り組みだろう。

ジーユーが原宿に開業した新型店舗。商品のQRコードを登録することで、アプリのお気に入りに直接商品を登録できる
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 一方、この新型店舗が消費者にどれほど魅力があるかは、判然としなかった。確かに、ジーユーが喧伝する「商品を持ち帰らなくてよいため、荷物が増えない」という点には一定のメリットを感じる。何より、筆者自身がそう感じているからだ。筆者は、衣料品や生活用品といったほとんどの買い物をEC(電子商取引)で済ますようになっている。そのため、店舗から商品を持って帰るという行為に煩わしささえ感じている。この手の類いの取り組みには大賛成だ。

 それでもなお、筆者はジーユーの店舗に諸手を挙げて喜べなかった。それは、店舗に一気通貫した戦略のようなものが見えなかったためだ。店舗の戦略、つまり、消費者に対して何をもたらすのか、という点だ。メディアが喜びそうな「新しさ」ではなく、消費者が必要とする新しい店舗の姿とは何なのか。それを期待していた以上には、見つけることができなかったのが残念に思えた。

 小売コンサルタントのダグ・スティーブンス氏は、『小売再生―リアル店舗はメディアになる』(プレジデント社)の中で、今後の店舗の役割は次の5つに集約されると話している。「消費者を引きつけられること」「独自性があること」「消費者の趣味嗜好を捉まえられること」「驚きを与えられること」「繰り返し楽しめること」。ジーユーはこの5つにおいて、業界内で相対的には独自性を見せることはできた。一方、それ以外についてはどうだっただろうか。

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