「最先端の工場を見に来ませんか。場所はチェコです」。コンシューマーエレクトロニクスの国際見本市「IFA 2019」(2019年9月6日~11日、ドイツ・ベルリン)の取材でドイツを訪問する際、パナソニックから誘いを受けた。

 チェコに最先端とはやや意外に思ったが、場所はプルゼニ。ドイツ語ではピルゼンで、あの有名な「ピルスナービール」の本場である。ビールと言えば一般にはドイツが思い浮かぶが、1人当たりの消費量はチェコが世界一らしい。ビール好きの筆者は、二つ返事で誘いに乗った。

プルゼニの街並み(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

黒物と白物の生産ラインが同居

 パナソニックの工場があるプルゼニまでは、チェコ共和国の首都プラハから車で1時間ほどかかる。この工場の正式な名称は「パナソニック AVCネットワークス チェコ(PAVCCZ)」で、パナソニックの製造子会社となる。従業員数は約1000人。幹部も含めてそのほとんどが地元の採用者である。

プルゼニにあるPAVCCZ(写真:パナソニック)
[画像のクリックで拡大表示]

 PAVCCZには、パナソニックの欧州事業の過去と未来が同居する。同工場は、これまでの屋台骨であったテレビやビデオを生産する黒物家電の欧州での中核工場であった。社名にある「AVCネットワークス」は、パナソニックでテレビやカメラ、オーディオ機器などの黒物家電を手掛けていた社内カンパニー「AVCネットワークス社(現コネクティッドソリューションズ社)」から来ていることからもそれが分かる。

 ところが、テレビ事業の成長は欧州では頭打ちになりつつある(関連記事)。IFA 2019でパナソニックの家電事業の責任者である品田正弘氏(同社常務執行役員 アプライアンス社 社長)は「8Kテレビは欧州では需要がない」と話した。今のところ高価で利益率が高い8Kテレビは、欧州の住宅事情からあまり売れないと見ているようだ。

 そんな同社が欧州で今後の成長を託す事業の1つが空調設備事業である。その中でも同社が期待するのが「Air to Water」と呼ばれる家庭向けの大型暖房設備だ。ドイツなど冬の寒さが厳しい欧州の北部では、家屋全体に温水を通すパイプを張り巡らせる全館暖房が主流となっている。Air to Waterは、従来のボイラーではなく電気で水を暖めるのが特徴だ。従来のボイラーを使う方式よりも環境に良いとして欧州では急速に普及が進んでいる。

 この欧州向けAir to Waterの室内機の生産を一手に担うのがPAVCCZである。マレーシアの事業所から生産を移転し、2018年10月に生産を開始した。つまり、PAVCCZにはかつての主力のテレビとこれからの主力の暖房設備の生産が同居しているのだ。

Air to Waterの生産の様子(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら