米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が2018年11月下旬に米ラスベガスで開催した「AWS re:Invent 2018」では、大小合わせて50種類を超える新サービスが発表された。すべてを網羅するのは不可能なので、記者にとって印象的だった話題を「ランキング」形式で振り返ってみよう。

AWSのアンディ・ジャシーCEO
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 なお記者が把握している50種類の新サービスの一覧表は、本記事の最後にまとめて記載した。すべてのサービスに興味がある方は、そちらをご覧頂きたい。

10位:サービスメッシュを実現する「AWS App Mesh」

 最初に紹介したいのは、マイクロサービス同士のコミュニケーションを制御する仕組み「サービスメッシュ」を実現する「AWS App Mesh」だ。数百~数千のマイクロサービスが連携する巨大な分散アプリケーションでは、マイクロサービス同士のルーティングやロードバランシングなどが課題になる。そうした問題を解決するのがサービスメッシュだ。

 米グーグル(Google)は2018年7月に開催したクラウドのイベント「Google Cloud Next '18」で、「Kubernetes」上にサービスメッシュを実現するオープンソースソフトウエア(OSS)「Istio」が「バージョン1.0」になったことを大々的に発表した。サービスメッシュは今、急速に注目されている存在だ。AWSがサービスメッシュに参入したのは納得がいく。

 しかしAWSはAWS App Meshを基調講演で取り上げず、ブログと専門セッションで発表した。そもそも今回のAWS re:Inventでは、マイクロサービスやコンテナ管理、Kubernetesに関する発表がほとんど無かった。唯一の例外がAWS App Meshだった。コンテナやマイクロサービスに関するAWSの謎の沈黙が気になった。

9位:「AWS Lambda」のRubyやCOBOL対応

 コンテナやマイクロサービスに関しては静かだったAWSだったが、イベント駆動型コード実行サービス「AWS Lambda」に関しては饒舌だった。AWS Lambdaで実行できるコードの種類として新たに「Ruby」に対応するなど、様々な新機能を追加した。

 カスタムラインタイムという機構も目をひいた。AWS Lambdaではイベントが発生すると、コードを実行するためのランタイムが瞬時に起動する。そのラインタイムをカスタマイズすることで、AWSがサポートしていない言語のコードも実行できるようにした。これによって「C++」「Rust」「PHP」「COBOL」「Erlang」などが利用可能になった。AWS Lambdaという最新サービスで、COBOLという過去の資産が利用できるようになったことは大きな驚きだった。

8位:AWS Lambdaの軽量仮想マシン「Firecracker」

 AWSは今回、AWS Lambdaやコンテナの運用管理サービスである「AWS Fargate」で使用する軽量仮想マシン(microVM)「Firecracker」を、オープンソースソフトウエア(OSS)として公開した。

 記者が興味深く感じたのは、AWSがAWS LambdaやAWS Fargateのような「サーバーレス」のサービス、つまりは仮想マシンではないアプリケーション実行環境をオンデマンドで提供するサービスを実現するために、新しい仮想マシン技術を新たに開発していたことだ。

 目的はセキュリティーの確保だ。「コンテナはサンドボックスではない」。グーグルは「Google App Engine(GAE)」用に開発した新しいハイパーバイザー「gVisor」を2018年にOSSとして公開した際、開発理由をそう説明している。

 GAEもアプリケーション実行環境として、仮想マシンではなくコンテナをユーザーに提供する。しかしOSを論理分割するコンテナでは、複数のユーザーが同一のOSカーネル上でアプリケーションを実行することになる。ユーザーごとに仮想マシンを用意する方式に比べると、ユーザーの隔離が甘くなる。そこでユーザーごとにOSカーネルを用意するgVisorという新しいハイパーバイザーを開発した。

 AWSも同じ事情を抱えていた。AWSはAWS Lambdaを2014年に開始した当初、ユーザーごとにEC2の仮想マシンを割り当て、AWS Lambdaのランタイムをその仮想マシン上で起動していた。つまり元からユーザーの隔離に仮想マシンを使用していたわけだ。そして今回、EC2仮想マシンをより高速に起動できるFirecrackerの軽量仮想マシンに置き換えた。

 サーバーレスとは、ユーザーがサーバーの面倒を意識しなくてよくなる、という意味だ。そしてAWSやGoogleの動きが示すように、サーバーレスは「仮想マシンレス」や「ハイパーバイザーレス」では無かった。言葉遊びのように聞こえるかもしれないが、なかなか興味深い。

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