多くのシステム開発現場が残業時間の削減、有休取得率の向上を目指し、働き方改革に取り組んでいる。ところが、取り組みが今ひとつ成果につながっていないというぼやきをよく耳にする。なぜ残業が減らず、思うように有給休暇を取得できないのか。

 パーソル総合研究所の小林祐児シンクタンク本部リサーチ部主任研究員は「残業の発生にはメカニズムがあり、システム開発の現場はそれが起こりやすい要素が潜んでいる」と指摘する。同社は立教大学経営学部の中原淳教授と共同で、2017年から2018年にかけて長時間労働に関する大規模な実態調査を実施した。

パーソル総合研究所の小林祐児シンクタンク本部リサーチ部主任研究員

 小林主任研究員は「調査を通じて、残業は『集中』『感染』『麻痺』『遺伝』というメカニズムで発生すると分かった」と話す。優秀なメンバーに仕事が集中して長時間労働を余儀なくされ(集中)、チームに帰りにくい雰囲気が生まれ(感染)、やがてその環境に慣れて不満を持たなくなる(麻痺)という構造だ。こうした環境で育ったマネジャーは部下に残業を強いる傾向が強く、残業の習慣が世代や組織を越えて受け継がれる(遺伝)。

 このメカニズムに心当たりがあるSEは多いのではないだろうか。筆者はシステム開発現場への取材で「システム開発は優秀な人とそうでない人で生産性の差が大きく、どうしても優秀なメンバーに仕事が集中してしまう」という声を幾度となく聞いた。優秀な人ほど忙しいというのは、多くのシステム開発現場で見られる光景だ。

働き方改革で課長の残業が増える

 昨今は残業削減をルール化する企業が増えているが「それが逆効果を生むケースもある。メンバーの仕事をマネジャーが引き取ったりと、ここ1~2年は課長クラスにしわ寄せが行く傾向が目立っている」(小林主任研究員)。優秀なメンバーへの負荷集中を避けようとした結果、今度はマネジャーに負荷が集中しているという企業が多いのだ。

 チーム内の誰かしらが長時間労働をしだすと、それはチームに感染する。パーソル総合研究所と中原教授の調査によると、上司や同僚と残業時間が増えるに従って、帰りにくい雰囲気がある職場の割合は上昇していた。さらに「調査を分析したところ、職別に見てIT系技術職は残業の感染が最も起こりやすい職種だった」(小林主任研究員)。

職場に「帰りにくい雰囲気」があると回答した割合
(出所:パーソル総合研究所・中原淳 長時間労働に関する実態調査)

 システム開発はチームが一丸となって作業を進める。ここに残業が起こりやすい要素が潜んでいる。遅くまで残っている人がいるなか、自分だけが早く帰るのは気兼ねをしてしまう。遅くまで残っているのが自分のタスクを引き取った上司であったり、尊敬する優秀な同僚であったりすればなおさらだ。

 異なる企業に所属する人たちでチームを作るという、システム開発特有の環境にも課題がありそうだ。客先常駐で仕事をしているSEへの取材では「常駐先では『仕事は終わってないけれど、今日はノー残業デーなので定時で帰ります』とは言いづらい」という声を聞く。

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