調査会社テスティーによると、都内在住の女子大生337人のうち、77.5%は長財布を使っているそうだ。最近、クラッチバッグやミニバッグを抱えて軽やかに歩く若い女性をよく見かける。てっきり、こうした小さなバッグには、スマートフォンと一緒に、「ミニ財布」を放り込むのがはやっているのかと勝手に思い込んでいたが、どうやら違うようだ。

 世代間ギャップを埋める小さな共通点が見つかるだけで一喜一憂してしまうのは「オッサン世代」の悪癖かもしれないが、50歳を目前に控えた筆者も実は長財布を長年愛用している。駆け出し時代、学生時代から使っていたナイロン製でボロボロの三つ折り財布をお尻のポケットにいつも突っ込んでいた私。ある時先輩に「お金持ちになるにはさ、おまえも長財布を使わなきゃ駄目なんだよ」と諭されて以来、長財布派に転向した。

 飲みに連れて行ってくれた先で、会計時に高級ブランドの長財布を胸元から取り出し、ピン札をピシッと出す。先輩のそんな姿がとても格好良く、あんな大人になりたいと憧れたものである。

メタボな友人が「三つ折り財布」のダイエットに成功

 さて先日、私と違って三つ折り財布派を貫き通す親友と飲んでいた際、会計時の彼の財布を見て驚いた。いつもパンパンに膨れ上がってまるでロールケーキみたいだった三つ折り財布がずいぶんスマートになっていたからだ。おなかがメタボになったのに財布はずいぶんダイエットできたんだねとからかうと、「ポイントカードやら会員カードやらがどんどん減ったんだよ。みんなアプリになってさ」との回答。なるほど、確かに最近は新しい店で買い物をして会員登録すると、たいていオリジナルのアプリをダウンロードさせられる。よく考えたら、筆者の長財布の中もだいぶカード類が減った気がする。

キャッスレスの流れで、ポイントカードのアプリ化が進んでいる
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 「ただ、ポイントカードや会員カードがプラスチックからアプリに変わっても、そんなに便利になった気がしないね」。そんな会話をして彼とはその日は別れた。帰りの電車で、その一言が引っかかって酔った頭であれこれ考えを巡らせていると、財布は軽くなっても使い勝手が悪くなった場面や体験は日常に意外に多いのではないかという気がしてきた。

 例えば筆者はドラッグストアの「トモズ」をよく利用し、後払い式電子マネー「iD」で支払っている。トモズは独自の「トモズポイントカード」と共通式の「Ponta」の2種類のポイントカードを併用し、一度の買い物で両方のポイントをためられるメリットを店内のPOPなどでアピールしている。このメリットを得ようとすると支払う際に、独自カードとPontaカード、iDの3点セットを提示する必要がある。これがなかなかに手間がかかる。次のような手順だ。

 (1)まず、長財布からトモズポイントカードを取り出し店員に手渡す。まだアプリ化していないのでこれだけはしょうがない。このときポイントカードを後でしまう必要があるので、長財布はいったんレジの机の上に置く。(2)次にiPhoneをポケットから取り出し、Pontaアプリを立ち上げて表示されたバーコードを店員に見せて読み取ってもらう。(3)続いて、「支払いはiDで」と店員に伝えて、iPhoneをいったん自分の側に戻す。iPhoneのiOS標準の財布アプリ「Apple Wallet」に登録してあるiDで支払うには電源ボタンをカチカチと2回押す必要があるのでこれを実行。「青く光ったらかざしてください」と言われるので、リーダーにiPhoneをかざす。(4)決済完了音が鳴ったらスマホをポケットに入れて、レジに置きっぱなしだった長財布を再び手にして、店員からポイントカードとレシートを受け取りしまう――。

 改めて文字にすると、毎回こんな面倒な作業をよくやっているなと自分でも思う。ポイントカードの利用をやめてしまいたくなる衝動に毎回かられるが、貧乏性なので“それなりに”たまるポイントをみすみす捨てるのはもったいない。だから踏みとどまっている。

 キャッシュレスが日本で普及しない理由として、「現金のほうが便利だから乗り換えるメリットがない」という声をよく耳にする。その声を因数分解していくと、幾つかの解が浮かび上がるが、1つには店頭での買い物に付き物のリアルなポイントカードの提示も含めて買い物体験を“アップグレード”していないじゃないかという不満の声もあるように思う。

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