日本は高スキル人材の確保が最も難しい国――。ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンが2018年11月6日に発表した調査結果は、国内の人材不足を浮き彫りにする内容だった。データサイエンティストやAI(人工知能)技術者などは世界的に足りないとされるが、とりわけ日本の状況は深刻だ。

 人材不足の解消策の1つとして期待されるのが、日本での就職を希望する海外人材の獲得である。だが現時点では、言葉の壁などいくつものハードルが存在する。あるインド人データサイエンティストの国内企業への転職事例に触れ、そのことを改めて実感した。

9社中8社が書類選考で不採用

 筆者がこの事例を知ったのは、2018年11月8日に行われた「GOOD AGENT AWARD 2018」(リクルートキャリア主催)を取材したときのこと。優れた人材エージェントを表彰するイベントで、優秀者5組が自身の仲介事例をプレゼンした。そのうちの1組として、レバテックの新卒2人組、ITリクルーティング事業部 リクルーティングアドバイザーグループの西瑶子氏と同部キャリアアドバイザーグループの須田茉衣子氏が登壇。インド人エンジニアの転職仲介事例を発表した。

 応募者である海外エンジニアの支援を須田氏が、採用側であるITベンチャーの支援を西氏が手掛け、日本語が話せない海外人材の転職仲介を社内で初めて成功させたという内容。2018年入社、社会人キャリア数カ月の2人による“体当たり”ともいえる行動力に会場は沸き、参加者の投票で決まる「オーディエンス賞」を受賞した。

レバテック ITリクルーティング事業部 リクルーティングアドバイザーグループの西瑶子氏(左)と同部キャリアアドバイザーグループの須田茉衣子氏
[画像のクリックで拡大表示]

 須田氏は入社後間もない2018年6月、インドでデータサイエンティストとして働くサビック・ムケルジー氏の担当になった。ムケルジー氏は名門インド工科大学で機械学習を学んだ後、米国に本社を置く大手ビールメーカーのインド支社に勤務していた。友人の紹介でレバテックを知り、登録したという。

 来日経験がなく、日本語も話せないムケルジー氏がなぜ日本への転職を考え始めたのか。動機は、日本文化への憧れだったという。日本のアニメやマンガが好きで、日本で働きたいという漠然とした夢を持っていた。父親に日本出張の経験があり、家族で日本への親近感を抱いていたことも後押しになった。

 自身も留学経験があり、大学時代は外国人学生の支援活動も手掛けていた須田氏。海外で働きたいというムケルジー氏の思いに共感し、「絶対に支援したい、と思った」(須田氏)。だが入社3カ月目で、キャリアアドバイザーとしての経験が浅い。社内を見渡せば外国人の転職仲介実績はあるが、日本語が話せない人材については事例がなく、十分なノウハウが蓄積されていなかった。

 上司や先輩に相談しつつ手探りの支援を始めたが、早速、厳しさを思い知らされる。IT企業を中心に9社にエントリーしたが、そのうち8社から、書類選考の時点で不採用との返答があったのだ。主な不採用理由は、「日本語が話せない」こと。技術スキルは評価されたが、コミュニケーション面での不安が壁となった。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は登録月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら