企業のグローバル競争が激しくなり、コスト競争力の向上や市場開拓のために、多くの日本企業が海外に生産拠点を造った*1。一方で、開発拠点を海外に造る動きは思ったほど進んでいない。開発については日本で、日本人技術者が中心となって進めている日本企業は依然として多い。アジアに開発拠点を造ったある自動車メーカーにその実力を聞いたところ、率直に言って芳しくなかった。「日本に比べるとまだまだ一人前とは言いがたい」とのことだった*2

*1 1990年代後半からその動きが激しくなり、2000年以降は中国の製造業の台頭で加速した。それから年数を重ねたこともあり、十分に成長した海外の生産拠点を持つ日本企業は少なくない。中には、高い実力を備えたタイ工場などが「マザー工場」の機能を果たし、他のアジアの工場の立ち上げや人材育成などを支援しているケースもある。

*2 ただ、年収が日本人技術者の半分以下だったため、この評価は公平とは言えない可能性がある。金銭的な報酬の多寡も考慮して評価すべきではないだろうか。

 だが、市場が縮小して人手不足が加速している日本と、成長余力がある新興国という世界の現実を踏まえると、今後、日本企業が成長を続けるには、「開発拠点のグローバル化」が必須条件になると筆者は見ている。

 一足先に開発拠点のグローバル化に踏み切り、業績から見て成功していると言える企業の1つにダイキン工業(以下、ダイキン)がある。同社は海外に開発拠点を9つ持つ。「現地密着型開発」と呼ぶ開発戦略を実行しているからだ。事実、海外に開発拠点を置くことで現地の顧客ニーズをより正確に吸収し、同社の製品は世界中でよく売れている。

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ダイキンエアコンディショニングインド社取締役社長のKanwal Jeet Jawa氏
インド人社員の高い学力とハングリー精神を武器に、インド市場で「絶対的No.1の空調事業を目指す」と語る。(写真:日経 xTECH)

 海外の開発拠点とはいえ、そこにいる全員が現地の人間というわけでは、もちろんない。赴任した日本人管理者(技術者)が現地の技術者をマネジメントして製品の開発設計を進めている。海外の生産拠点では日本人管理者と現地の作業者との間で考え方の違いがあり、それが元でトラブルに発展することがある。それは海外の開発拠点も同じだ。そこで働く現地の技術者の考え方を知っておくことは、今後日本人技術者が海外の開発拠点で働くことになったときに有益だろう。

高い基礎学力とハングリー精神

 ダイキンは2016年にインドに研究開発センター(Daikin Airconditioning India R&D Centre)を設立した。それまでは工場に属していた開発機能を研究開発センターとして独立させることで、製品の開発設計を本格化させたのだ。インドは巨大な成長市場であり、将来の市場であるアフリカに進出する足掛かりともなり得る重要な国である。ここで働く100人あまりのインド人技術者(設計者)が、同国市場のニーズを満たす製品の開発設計を担っている。この研究開発センターのセンター長に、部下として一緒に働くインド人技術者の印象を尋ねた。

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インドに設けた研究開発センター
少数の日本人管理者と共に100人のインド人技術者が働く。(写真:日経 xTECH)

 真っ先に挙がったのは、インド人技術者の頭の良さだ。同センターで働くインド人技術者の8割がキャリア(中途)採用で、新卒(大卒)採用は2割だという。この新卒インド人技術者を取り上げると、その平均的な基礎学力(大学で身に付けられる学力)は、新卒日本人技術者よりも高いという印象があるという。

 その学力を支えるのは、日本人よりも強いハングリー精神だ。「技術を身に付けて立身出世したい」という上昇志向がビシバシ伝わるそうだ。そのためか、自己主張も強く、演説や自己PRにも長(た)けている。インド人技術者と仕事をしていると、「地頭の良さ」がよく分かるそうだ。

 その頭の良さは、技術者に限らずインド人の消費動向にも表れている。製品を買うとき、日本をはじめ先進国では顧客の選択が高級品か普及品かの大きく2つに分かれる傾向がある。これに対し、インドでは選択肢が多い。買い物を失敗したくないという思いが強く、競合製品を徹底的に比較した上で購入する製品を選ぶのだ。こうしたインド人の比較検討のニーズに応えるべく、例えば複数のライバル車種の仕様がびっしりと記載された自動車雑誌が発行されていることは、自動車業界に携わる人ならよく知っていることだろう。

 こうした状況から、「考える仕事、すなわち技術者として製品を開発設計する仕事はインド人に向いている」と同センター長はみている。

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