「では、出発します」――。運転席に座っていた保安員がディスプレーに表示されたボタンにタッチすると、小型の電気自動車(EV)がゴトゴトと動きだした。2019年10月、大阪府門真市にあるパナソニックの本社敷地内で行われた、自動運転車のデモンストレーションでの1場面だ。運転席に人がいるものの、ステアリングやアクセル、ブレーキの操作は行っていない。システムが周囲の状況などを検知して操作を判断する、レベル4相当の自動運転車だ。

パナソニックの本社構内を走行する小型EV車。(撮影:日経Automotive)
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 電動のゴルフカートを改造したこの小型EVは、周囲の状況を注意深く確認するかのように、ゆっくりとした速度で走っていた。最高速度は20km/h程度なので、少し速めの自転車といった感じだ。事前に決められたルートに従って走行する。

 パナソニックはこの自動運転の小型EVを、本社構内を移動するための足として活用している。社員向けのライドシェアサービスだ。スマートフォンのアプリを使って予約をすれば、指定の乗降場所と時間に車両が自動運転で迎えに来てくれる。

状況把握に戸惑った不意な停車

 筆者は後部座席に座って自動走行を体験した。丁字路に差し掛かると、ギュッとブレーキがかかり減速する。システムが周囲の状況を確認しているのか、ワンテンポおいてから再び走り始めて角を曲がった。停止と発進時の加速度(G)がやや強く、体が前後にぐっと振られる感じがあったが、「この点は改造のベースとした電動カートの特性であり改善できなかった」と担当者は説明した。

 構内には自動運転の小型EVの他に、歩行者や一般的な自動車も行き交っている。横断歩道もあり、小さな街のような環境だ。もちろん、横断歩道を渡っている人を検知すれば、車両は横断歩道の前で止まり、人が渡り終わるのを待つ。急いで構内を移動したいときは少しいらいらしてしまうかもしれないが、余裕をもって移動するのであれば車内でほっと一息つけるようで、のどかな感じがした。

パナソニックの本社構内では、人と自動運転の小型EVが共存していた。車両に設置したセンサーで人を検知すると、状況に応じて車両を停止させたりする。写真の右側に映っているのが小型EV車のセンサー部。(出所:パナソニック)
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 体験用に設定した走行ルートを半分過ぎたときのことだ。駐車場内を通り過ぎる途中、急に車両が停止した。実際には20km/hにも満たない速度なので急停車というほどではないのだが、不意な停車に一瞬何が起こったのか分からなかった筆者は同乗していた保安員に思わず理由を尋ねてしまった。

 「駐車スペースから車が出てきたからですね」と、さらりと答える保安員。なるほど、ぼやっと前方を眺めながら後部座席に座っていた筆者には、車が出てくる様子は認識できていなかったのだ。ここが、前方をきちんと注視していた保安員との違いだろう。前を見ていたつもりだったが、運転しなくてもいいという気の緩みから筆者の注意は散漫だったようだ。

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